正直不動産と現実の不動産の違い

2022年4月27日から6月7日までの間で、不動産会社を描いた『正直不動産』というドラマが放送されました。山下智久氏が主演で計10個の話数(※1)があります。 

とある出来事がきっかけで正直なことしか喋れなくなった、不動産会社勤務の永瀬財地が繰り広げる物語です。フィクションではあるものの、要所で実際に起こった事件なども盛り込まれています。

住居を購入するときに当該ドラマを参考にした人もいるかもしれませんが、果たして本当に起こりうる話なのでしょうか。ここでは、『正直不動産』と現実の不動産業界の違いを比較します。  

ドラマと現実の違い

ドラマの『正直不動産』と現実の不動産の売買には、さまざまな違いが見られます。いくらリアルな社会を描いたとはいえども、実際の取引の様子とは異なる箇所も少なくありません。とくに、セールスマンの会話には注意が必要です。

不動産会社は機械的に事務手続きを終わらせる

『正直不動産』の内容を見ると、主人公が顧客に「リスク」を事細かく説明しているシーンが頻繁に見受けられます。しかし、実際の事務では「重要事項説明」の内容で終わらせるパターンがほとんどです。

当然、建物の形状や水道およびガスといった設備に関しては入念に説明しなければなりません。こちらは、宅建業法35条(※2)にも定められています。一方で、このような内容に該当しない場合は、あまり深い話をすることはないといえるでしょう。

『正直不動産』は第1話から顧客の仕事や私生活について、主人公が深掘りするシーンが目立ちます。顧客のプライベートに、あそこまで踏み込んでくる業者は基本的にいません。たいていは機械的な作業になるため、あまり肩肘張らず不動産会社に訪ねてみましょう。

基本的には「顧客」の意思に従う

不動産の売買は、基本的に「顧客」の意思に従います。『正直不動産』は、「正直な言葉しか発せなくなった」人が主人公です。そのため、本来は不動産会社の業務以外の内容まで切り込んだセールスをしています。

ストーリー上、変わったシチュエーションで取引が行われているものの、現実では顧客の意思に従うことが基本です。業者側は確かにさまざまな知識を有していますが、契約と関係のない場面でアドバイスをするケースはほとんどありません。

各種の媒介契約はメリットとデメリットを伝えるのが普通

『正直不動産』の第2話では、家の売買に欠かせない「媒介取引」の内容が取り上げられています(※3)。この取引スタイルは、売主と買主の間に「不動産会社」が入って売買の仲介をすることです。媒介契約には3つの種類があり、それぞれで特徴も大きく異なります。

(※4)

一般媒介契約専任媒介契約専属専任媒介契約
特徴複数業者に依頼できる。自己発見できるほかの業者に依頼できない。自己発見できるほかの業者に依頼できない。自己発見できない
有効期間自由3カ月間3カ月間
報告義務なし2週間に1回以上1週間に1回以上

劇中にもあったとおり、不動産会社側はなるべく専属専任媒介契約を結ぶことが望ましいと考えています。なぜなら、ほかの業者との依頼を阻止し、確実にノルマにも近づけるからです。

ただし、本来は媒介契約のメリットとデメリットを伝え、顧客にとってフェアな状態にしなければなりません。余程悪質な企業に当たらない限りは、強引な手続きに当たる可能性は低いでしょう。

過去の不動産ドラマとの違い

ここで、ほかの不動産ドラマと現実との違いをまとめてみましょう。2019年1月から3月までの期間(※5)、『家を売る女の逆襲』が日本テレビ系列で放送されました。

北川景子さんが演じる「三軒家万智」は営業に優れており、数々の顧客に家を売る不動産屋です。『正直不動産』とは異なり、ノルマ主義で強引な方法を使った取引も見られます。

このドラマと現実の不動産売買の相違点について紹介しましょう。

LGBTの人向けのプランは充実しつつある

『家を売る女の逆襲』の第3話(※6)では、LGBT(同性愛者)の女性2人が住居の購入に苦戦しているシーンが多々あります。時代が変化したともいえるかもしれませんが、現実世界では数々の不動産会社のサポートも少なくありません。

三井住友信託銀行や住信SBIネット銀行などの金融機関で「ペアローン」や「収入合算(連帯債務)」の仕組みが採用(※7)されています。こちらは、LGBTの人でも住宅ローンが組める取り組みです。前者は2人が別々に、後者はどちらか一方が中心となって返済します。

また、住宅ローンの契約には別れた場合に備えた「パートナーシップ契約(※8)」もあります。同居するケースのみならず、別居の可能性も視野に入れていることから制度も充実しているといえるでしょう。

まとめ

以上のように、ドラマと現実では不動産売買の実態が異なるところもあります。なるべくリアルな世界を描いていますが、ある程度はフィクションとしてオーバーに作られているものです。  

とはいえ、不動産売買の基本的な内容を学ぶのであれば、ドラマから入ってもいいかもしれません。家を購入しようと考えている人は、『正直不動産』や『家を売る女の逆襲』などといったドラマから、大体の流れを押さえる方法も検討してみましょう。

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