人的資本ランキングで1位だった伊藤忠商事ってどんな会社?

「人的資本経営」という考え方をご存知でしょうか?人材の価値を最大限に引き出すべく人材を資本として捉え、中長期的な企業価値の向上を目指す経営手法のあり方です。(※1)

 

国内でこの経営手法に最も長けている企業が「伊藤忠商事」です。2022年10月に発表された「人的資本ランキング」では1位にランクインしました。果たして「伊藤忠商事」とはどのような会社なのでしょうか。また、なぜ1位を獲得できたのでしょうか。今回はこの2つの謎を深掘りします。ぜひ経営方針の参考にしてください。

人的資本ランキングとは?

人的資本ランキングは、サステナブル・ラボ株式会社が企業の人的資本データをAIとビッグデータを用いて分析し、経済的に強く社会的にやさしい会社をランクづけしたものです。2022年8月に国が発表した「人的資本可視化指針」を踏まえて作成された調査となっています。(※2)

 

ここでは、人的資本可視化指針の概要とランキングの結果について解説します。

人的資本可視化指針の概要

「人的資本可視化指針」では、企業の情報開示において以下の情報の充実を目指すことが示されました。

 

  • 経営ビジョン
  • 経営戦略
  • 経営目標の設定
  • ビジョン・戦略・目標にマッチする人材像
  • 人材育成の方策

 

経営戦略や経営目標の達成のため人的資本への方策を充実させ、よりサステナブルに企業価値を高められる経営を目指すための指針です。

ランキングの結果

ランキングは複数の指標をもとに、最もスコアが高い企業を1位としています。以下はその一例です。

 

  • 女性従業員や障がい者従業員の比率
  • 女性役員の比率
  • 有給消化率
  • 報酬の水準
  • 従業員一人当たりの月間残業時間

 

ランキングのTop5は以下のとおりです。

順位 企業名 スコア
1位 伊藤忠商事 77.16
2位 リクルートホールディングス 76.42
3位 三菱商事 75.97
4位 アステラス製薬 74.22
5位 三井物産 73.43

 

総合商社が多くランクインする結果となりました。伊藤忠商事が1位に輝いた理由については後の項目で説明します。

伊藤忠商事とは?

伊藤忠商事は、国内最大手の総合商社です。1858年に大阪で卸売業として創業し、1893年には現在の会社の根幹となる伊藤糸店を設立しました。1949年には現在の形となり、以後70年以上もの間事業を展開し続けています。(※4)

 

事業内容は以下のとおり多岐にわたり、多くの子会社を抱えています。

事業 主要子会社
繊維 (株)エドウイン など
機械 いすゞ自動車販売(株) など
金属 伊藤忠丸紅鉄鋼(株) など
エネルギー 伊藤忠エネクス(株) など
食料 プリマハム(株) など
住生活 (株)センチュリー・21ジャパン など
金融 (株)オリエントコーポレーション など
その他 (株)ファミリーマート など 

 

最近5年間では配当金が上昇し続けており、2022年は1株あたり140円の予想です。(※6)

ランキング1位になった要因

伊藤忠商事が人的資本ランキング1位となった要因は「女性従業員の活躍」です。

 

伊藤忠商事では2021年10月から「女性活躍推進委員会」を取締役会の諮問委員会として設置しています。2021年4月時点で女性役職者は35名でしたが、2022年4月には46名へ増加しました。重要なポジションへの登用も進んでおり、女性の活躍が目立ちます。(※7)

 

伊藤忠商事は、このほかにも多くの取組みを行っています。以下はその一例です。

 

  • 多様な人材数の拡大・定着・活躍支援の制度拡充

・人材多様化推進計画を策定し、多様な人材を受け入れる体制を整えた。

  • 朝型フレックスタイム制度や在宅勤務制度の導入

・8時以前の朝型勤務・15時以降の早帰りを認め、20時以降は原則残業禁止とした。

  • LGBT等性的マイノリティに関する支援

・社内会議室に多目的トイレを設置。また2020年度にはLGBTに関する専用相談窓口を設置。

  • ダイバーシティに関する研修やワークショップの実施

・女性のキャリアと介護の両立、キャリアと健康、男性の育休などをテーマに、2018年度から実施している。

  • 障がい者・シニアの活躍支援

・障がい者の拡大雇用・シニア世代の雇用延長を実施している。(※7)

 

このような取組みは国からも評価され、表彰や認定を受けています。

 

  • プラチナくるみん認定:仕事と育児の両立支援の取組みに特に優れた企業に認定。
  • 均等・両立推進企業表彰厚生労働大臣優良賞:仕事と育児・介護との両立支援の取組みが評価され表彰。
  • えるぼし認定:女性の活躍推進に関する状況等が優良である企業に認定。(※7)

 

女性従業員を始めとした多様性を受け入れる制度づくりと、制度の運用実績がランキング1位の獲得に繋がったといえそうです。

http://research-online.jp/all/economy/14911/

http://research-online.jp/all/economy/14589/

http://research-online.jp/all/economy/14493/

まとめ

ここまで、伊藤忠商事の企業概要と人的資本ランキング1位獲得の要因について解説しました。中長期的に企業の価値を高めるには人的資本への投資が欠かせません。制度や支援の拡充で人的資本を充実させ、サステナブルな経営を目指しましょう。

 

伊藤忠商事は配当金の上昇が示すように業績も好調です。株式を購入して企業へ投資するのもよいでしょう。リサーチオンラインでは投資に関する疑問や質問を受け付けています。お気軽にご相談ください。

 

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