現在、日本の公的年金の積立金を運用しているのは、「年金積立金管理運用独立行政法人」(以下GRIF)です。GRIFの発表によると、2021年度の運用益は10兆925億円で2年連続の黒字となっています。(※1)
年金運用が実は黒字と知って驚いた人も多いのではないでしょうか。本記事では年金運用の実態と、自分年金を増やしたい場合の運用方法について解説します。老後資金に不安のある方は参考にしてください。
この記事の目次
政府の年金運用について
公的年金は政府によって運用されています。元来、公的年金は現役世代から集金し高齢者世代へ支払うという「世代間扶養」が基本でした。しかし、この仕組みでは急激な少子高齢化に対応できません。
そのため、積立金の一部を給付にあてず積み立て運用し、運用益の収入も活用しています。現在、年金積立金の管理・運用を行っているのがGRIFという独立法人です。
年金積立金はリスク削減のため、複数の資産に分散投資しています。資産構成割合を基本に運用しており、具体的には次のとおりです。
- 国内債券:25%
- 外国債券:25%
- 国内株式:25%
- 外国株式:25%
それぞれに、±6~11%の乖離許容幅が設定されています。(※2)
収益額は毎年公開されており、2021年度末時点で105兆4,288億円の累積収益額が出ています。また、運用資産額は196兆5,926億円です。
銀行に預けるよりも自分で運用しよう
年金の運用益が出ていると聞くと、この手法を個人でも活用しようと考える人もいるでしょう。ご存じのとおり、日本では低金利が続いています。
そのため、銀行に普通預金でお金を預け続けても大きな利益は期待できません。そこで、GRIFの運用方針を利用して、投資を検討してはいかがでしょうか。
投資にはさまざまなものがあります。ここでは、初心者にも始めやすいものを3つ紹介します。
投資信託
投資家からお金を集め、運用の専門家が投資・運用する金融商品です。運用成果が各投資家に分配されます。投資信託を利用すれば、自分で株や債券を選ぶ必要はありません。小額の資金で始められる点もメリットです。ただし、プロに運用を委託するため、手数料がかかる商品の多い点は把握しておきましょう。
株式投資
株式会社が発行する株式を売買し、配当金や値上がり益などの利益を求める投資方法です。株価は日々値動きしており、基本的に100株単位で売買されています。
100株未満で購入可能な「ミニ株」という仕組みもあります。ミニ株は少しのお金で株を手に入れられる一方、株式総会で発言できる権利である「議決権」が手に入らない点は把握しておきましょう。
債券投資
国内外の政府や民間企業などが発行した債券に対し、資金を提供します。償還期限まで定期的な利息が受け取れ、満期鑑賞時には額面金額が戻ってきます。ただし、発行者の財務状況が悪化した場合、支払い不能等のリスクが生じる点は把握しておきましょう。
運用方法
株式や債券の運用方法にはさまざまなものがあります。ここでは、GRIFの運用方針をみていきましょう。
GRIFが用いている運用方法は主に次の3つです。
- 長期運用
- 分散投資
- 積立投資
それぞれについて詳しく見ていきます。
長期運用とは
短いスパンで見ると、株価は安定した動きを見せません。しかし、長い目で見ると右肩上がりで値動きしています。また、投資期間が長くなれば複利効果を得やすくなります。そのため、老後資金のために運用する場合、長期視点を持ちましょう。
「長期運用」に具体的な年数はありませんが、可能であれば20年以上の長期視点が必要です。さらに、長ければ長いほどお金を増やしやすくなります。
分散投資とは
資産を1つの商品だけで運用すると、損失が出た時にカバーできません。そのため、投資対象を複数持ち、リスク分散させましょう。
地域・商品・通貨などを分散させます。具体的には次のとおりです。
- 地域:国内・海外・新興国・先進国など
- 商品:国内債券・海外債券・国内株式・海外株式など
- 通貨:円・米ドル・ユーロ・豪ドルなど
積立投資とは
積立投資とは長期的に投資を継続する方法です。例えば、毎月・毎年など定期的に一定の金額で投資する手法で、「ドルコスト平均法」ともいいます。
購入金額を一定に保つと次のようになります。
- 価格が下がった場合、多くの数量を購入
- 価格が上がった場合、少ない数量を購入
そのため、平均購入単価を下げられる点がメリットです。また、値動きに気持ちを左右されず、淡々と購入できます。
まとめ
日本は低金利が続いているため、銀行にお金を預けていても利息は増えません。しかし、日本の公的年金の運用益は2年連続で黒字となっています。
公的年金を運用しているGRIFは、「長期運用」「分散投資」「積立投資」という投資方法を行っています。GRIFはポートフォリオも公開しているため、参考にしてもよいでしょう。
年金運用益が黒字と聞いて投資に興味を持った方は、この機会に始めてみてはいかがでしょうか。