岸田内閣が「資産所得倍増計画」を掲げた(※1)ことで、取り組みの一環として「NISAの恒久化」も目指すのかと注目を集めています。NISAにはさまざまな種類があり、それぞれで非課税期間や投資総額の上限も異なるのが特徴です。
資産運用にチャレンジしたい人の登竜門として期待され、利用者も大幅に増えています(※2)。ただ、現実的にNISAを恒久化することは可能なのでしょうか。ここでは、制度の改革によって起こりうるメリットやリスクを解説します。
この記事の目次
恒久化したらどうなる?
2022年には日本証券業協会で「NISAの恒久化」を提言すると話題になりました(※3)。しかし、具体的にいつ実施されるかは明らかになっていません。恒久化とは長く変わらない状態を作ることであり、要するにNISAの非課税期間を永遠に続ける取り組みです。
2024年にNISAは改正されますが、これまでと同じく5年間の非課税措置が採用されています。一方で、岸田内閣のマニフェストでは「投資」に注目していることは確かです。もし、恒久化が実現した場合に起こりうる変化をまとめましょう。
非課税期間が増えるため「節税効果」を発揮する
NISAの恒久化が実施される1番のメリットは「節税」です。もし、株や投資信託で金融資産を売買して利益が出た場合、総収入から発生した費用や負債利子などを差し引いた値に「20.315%」を乗じた部分が税金の対象(※4)となります(譲渡税)。
源泉徴収ありの特定口座を選ぶ、もしくは給与所得者の譲渡益が20万円以下に抑えらなければ確定申告不要制度(※5)も適用されません。一般NISAは120万円まで非課税であるため、比較すると差額は100万円です。恒久化が実現したら、大きな節税効果を発揮するでしょう。
老後資金を効率良く貯められる
NISAが作られた目的は、人々が老後資金を効率良く貯められるよう整備するためです。昭和は、金利が全体的に高かったら貯金するだけでも資産は増えていましたが、(※6)現在の日本は利率が著しく低い数値(※7)となっています。
そこで、株や投資信託などの金融資産を使った投資が注目されました。NISAは、なるべくリスクを抑えるべく日本や海外の投資信託を中心に扱っています。無論、損失が発生するケースもあるものの、初心者だからこそ利用しやすい制度です。
利用し続けると「損益通算」できない時期も増える
NISAの非課税期間が恒久化すると、税計算上で不利になる人も一定数現れます。制度を利用した場合、一般NISAは120万円までであれば税金が発生しません。ただし、確定申告上で大きな注意点があります。
株や投資信託も併せて運用している人は、基本的に税率20%分の金額を支払わなければなりません。NISAで得た運用益は、これらと「損益通算」ができない(※8)ように作られています。
損益通算とは、確定申告でまとめて利益を計算することです。例えば、株で50万円儲けたもののNISAで10万円損したとしましょう。もし、これが全て株の損益であれば、「50−10」で40万円分の金額が課税対象となります。
しかし、NISAで損失が発生しても金額を合わせて確定申告ができません。つまり、50万円分が課税対象で、10万円分はそのまま赤字として扱われます。
NISAの現状
NISAには大きく分けて3つの種類があります。具体的な制度は下記のとおりです。
一般NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA | |
上限額 | 年120万円 | 年40万円 | 年80万円 |
非課税期間 | 5年間 | 20年間 | 5年間 |
そのため、一口にNISAと言っても制度の内容は大きく異なります。実施されて以降の現状を解説しましょう。
NISAの利用者は増えている
前述でも触れましたが、NISAの利用者は年々大幅に増えています。現在の利用者の情報を表にまとめましょう。
※令和3年6月末時点(※10)
NISAの種類 | 開設口座数 |
一般NISA | 約1,237万2,998口座 |
つみたてNISA | 417万5,430口座 |
ジュニアNISA | 56万9,639口座 |
NISAは全体的に多くの国民から注目を集めているといえます。恒久化へ乗り出すうえでは、大きな要素のひとつとなるかもしれません。
NISAを一本化しようと考える人も一定数いる
「NISAは一本化すべき」といった声は、つみたてNISAが作られた当初からニュースでも取り上げられていました。一般NISAとつみたてNISAの制度を合体し、より簡易的な仕組みを作るシステムです。
確かに、具体的な内容が異なることで混乱している人もゼロではないでしょう。恒久化が実現できれば、NISAの形も大きく変わる可能性はゼロではありません。
NISAの終了時期が延長している
NISAは元々期限が定められている制度でした。一般NISAの場合は2023年までと決められていましたが、2024年の新NISAのスタートで期間が延長(※11)されます。再度5年間の非課税期間が適用され、2028年まで利用可能です。
つみたてNISAは、2042年まで運用できるようにアップデート(※12)されました(従来は2037年まで)。上述したとおり、一般NISAとつみたてNISAは一本化される予定です。このまま恒久化が実現されても不自然ではないでしょう。
ちなみに、ジュニアNISAは2023年を最後に廃止(※13)されます。ただし、2023年以内に購入した金融商品は、2024年以降も運用自体は継続できます(18歳まで)。
まとめ
NISAが恒久化すれば、より多くの国民が金融資産を用いた投資ができると考えられています。非課税枠を利用して、老後資金を少しでも貯められるよう検討してみましょう。
そのためには、NISAの種類とそれぞれのルールを再確認することが大切です。また、今後の動向にも注目しておくことがコツだといえるでしょう。