仕事を引退した後の生活に備え、老後資金を準備しようと考えている人も少なくないでしょう。さまざまなお金の貯め方がありますが、ここでは「iDeCo」と「個人年金保険」を比較します。各老後資金の特徴と仕組みについて押さえましょう。
この記事の目次
iDeCoの特徴と仕組み
iDeCoは、加入者自らが掛金を負担し、運用成果に応じて支給額が変わる「確定拠出年金」です。少子高齢化が進む中で、老後資金の確保が難しくなったことで2001年10月(※1)に制度が作られました。iDeCoの概要を紹介します。
運用益は非課税の対象となる
iDeCoの利用で得た運用益に関しては、税金を支払う必要がありません(※2)。例えば、通常の投資信託や株式投資で収益を得ると売買益は譲渡所得、配当金については配当所得で所得税が発生します。
iDeCoは、拠出した金額より利益を出しても、非課税のまま再投資できる点が強みです。60歳まで(2022年5月からは65歳まで)貯められる(※3)ため、老後資金の準備に向いています。
掛金は所得控除の対象となる
iDeCoで拠出した掛金は、全額が所得控除の対象です。所得税は、所得金額に比例して税率が変わる「累進課税制度」(※4)を採用しています。つまり、合計所得が低くなるほど負担も軽減できます。
所得金額から差し引かれる所得控除は、節税において欠かせない存在です。ただし、iDeCoは加入者のライフスタイルに応じて、表のように上限額が設定されます。(※5)
加入対象者 | 月額上限額 |
自営業者やフリーランス、パートなど(国民保険第1号被保険者) | 6万8,000円 |
雇用保険加入者及びその配偶者(企業年金なし) | 2万3,000円 |
企業型DCの加入者 | 2万円 |
公務員や企業型給付年金の加入者 | 1万2,000円 |
自分が対象となる条件を確認しつつ、掛金の負担額を決めましょう。
原則60歳になるまで引き出せない
iDeCoは、原則として60歳になるまで引き出すことができません。(※6)掛金を負担している間に生活状況が変わっても、中途解約は不可能であるため気を付けてください。
ちなみに、拠出額の変更は1年に1回のみ認められています。(※7)年金を受け取れる年齢は、60歳〜75歳までです。(※8)普段の生活で苦しまないためにも、計画的に利用しなければなりません。
個人年金保険の特徴と仕組み
個人年金保険は、民間企業が提供する保険の一つで、同じく老後資金の準備に使われます。種類も非常に多く、ライフスタイルによって適切な商品も変わる点が特徴です。
条件を満たすと年金が支払われる
個人年金保険では、各商品で条件を満たした場合に年金が貰えます。例えば、「終身年金」は年金の受取期間中で被保険者が生きている場合に限り、一定額が支払われるタイプです。(※9)死亡した時点で契約が終了し、遺族に対する老後資金の支給はありません。
一方で、「確定年金」であれば、被保険者が亡くなっても遺族へ向けて年金の支払いが続きます。配偶者や子どもと暮らす家庭におすすめな方法です。(※10)
個人年金保険料控除の対象となる
生命保険は、条件を満たせば支払った保険料が所得控除に活用できます。控除の対象及び上限額の関係を表にまとめました。
(※11)
控除の対象 | 控除額の上限(所得税) |
一般生命保険料控除 | 4万円 |
介護医療保険料控除 | 4万円 |
個人年金保険料控除 | 4万円 |
個人年金保険料控除の対象は、4万円までに設定されています。しかし、同時に数々の条件を満たさなければなりません。
(※12)
- 保険料の払込期間が10年以上
- 受取開始が60歳以上かつ確定年金の場合は受取期間が10年以上
- 年金の受取者は本人か配偶者かつ被保険者と同一人物
老後資金を効率良く用意するためにも、基本的な要件は確実に押さえましょう。
中途解約で支給額が払込金額より下回ることもある
個人年金保険では、若いうちに解約すると年金の支給額(解約返戻金)が、払込金額より下回る可能性もあります。年金額を求める際に用いられる割合が「解約返戻率」です。
一般的に解約返戻率の大小は、保険料を納める期間に比例します。ちなみに、年金の支給額を求める計算式は、「解約返戻金=払込金額×解約返戻率」(※13)です。例えば、払込期間が3年のみで返戻率が50%と仮定しましょう。
月3万円の保険料を納めた場合、払込総額は「3万円×12ヶ月×3年」で108万円です。一方で、年金は「108万円×50%」で54万円しか貰えません。早くして亡くなると、個人年金保険では損失が発生します。
iDeCoに向いている人
iDeCoに老後資金を貯めたほうがいい人について紹介します。
- 自営業者
- フリーランス
理由は、掛金の上限額です。国民保険第1号被保険者に該当するのであれば、月額で6万8,000円まで拠出できます。言い換えれば、最も高い所得控除を受けられる人です。
特に、自営業者やフリーランスは会社に所属している人も少なく、雇用保険が適用されないケースもあるでしょう。国民年金だけでは、備えられる老後資金も限られます。iDeCoを利用し、少しでも年金を積み立てておくことが賢明です。
個人年金保険に向いている人
個人年金保険に向いている人は、以下の例が挙げられます。
- 貯金が苦手な人
- 途中解約にも備えておきたい人
個人年金保険では、iDeCoのように職業が保険料の上限額に、大きな影響を与えているわけではありません。そのため、性格や生活状況で利用すべきか否かを区別します。
個人年金保険は、iDeCoと違って複雑な手続きを必要とせずに途中解約ができる制度です。元本割れのリスクはあるものの、運用が難しいと感じたら解約返戻金を受け取れます。解約する事態も想定している場合は、iDeCoではなく個人年金保険を選ぶといいでしょう。
まとめ
iDeCoと個人年金の特徴を比べると、それぞれに異なるメリットとデメリットがあります。ここで説明した内容はあくまで一例であり、その他の事情で老後資金を準備する方法も変わるはずです。自身の職業や生活状況を振り返り、最適だと思う制度を利用しましょう。