はじめに
昨今、LGBTQ+のタレントやモデル、YouTuber、インフルエンサーなどが人気を集めています。
また、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)でLGBTQ+への差別・偏見をなくすことが目標のひとつとして掲げられ、世界的にも意識が高まっています。
LGBTQ+について考えることは、これからビジネスを展開していく上でも重要であるといえるでしょう。
今回は2020年12月に全国20~59歳の計60,000人を対象に行われた、電通ダイバーシティ・ラボによる調査結果をもとに、日本におけるLGBTQ+層の市場規模、そしてストレート層の意識・知識についてご紹介します。
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LGBTQ+に対するストレート層のクラスター分析
出典:dentsu
まずは、ストレート層の意識・知識について見ていきましょう。
ストレート層5,685人にLGBTQ+に対してどのような考えを持っているのかを問う複数の質問を行い、因子を課題意識、配慮意識、生理的嫌悪、社会影響懸念、知識の5つに分けて分析した調査結果ですが、
調査対象のうち最も多いのは、LGBTQ+を知ってはいるものの自分事化できていない「知識ある他人事層」となりました。
各クラスターの割合と特徴は以下に記載します。
- アクティブサポーター層(29.4%):課題意識が高く、積極的にサポートする姿勢がある。身近な当事者や、海外コンテンツを通して理解を深めた。
- 天然フレンドリー層(9.2%) :知識のスコアは低いが、課題意識や配慮意識が比較的高く、ナチュラルにオープンマインド。
- 知識ある他人事層(34.1%):知識はあるが、当事者が身近にいないなど、課題感を覚えるきっかけがない。現状維持派。
- 誤解流され層(16.2%):少子化といった社会への悪影響を懸念するなど、誤解が多いため一見批判的だが、もともと人権意識はある。
- 敬遠回避層(5.4%):積極的に批判はしないが、配慮意識が乏しく関わりを避ける。知識はある程度あっても、課題と感じていない。
- 批判アンチ層(5.7%) :生理的嫌悪、社会への影響懸念が著しく高い。人種差別や環境問題などの社会課題に対しても興味を持たない。
34.1%を占める「知識ある他人事層」の特徴として、配慮の姿勢はあるものの、「関心がない」という意見が多く、課題意識は高くない傾向が見受けられます。
当事者が家族、友人、知人にいると回答した人が批判アンチ層に次いで少ないため、自分事として捉えられないという課題があると考えられます。
しかし、次いで多いのは29.4%を占める課題意識の高い「アクティブサポーター層」となっています。
知識はないもののオープンマインドである「天然フレンドリー層」の割合は9.2%を示しており、ふたつを合わせると38.6%となります。
「知識ある他人事層」も偏見がある訳ではないため、企業がLGBTQ+層に向けたアプローチをした時に好感は抱いても反感を抱くことはないでしょう。
したがって、計72.7%の人が批判的にならずに受け入れることが推測されます。
LGBTQ+層の日本の市場規模は5.42兆円(推計)
出典:dentsu
LGBTQ+層に該当すると回答した人は全体の8.9%で、それは左利きの人の割合やAB型の人の割合とさほど変わらないとされています。
では、LGBTQ+層はどのような消費パワーを持っているのでしょうか。
上の表は、一般家庭において消費金額が大きく、また消費者の嗜好によって商品選択の変更が比較的容易な22の商品・サービスカテゴリーを選択し、全体と比べたLGBTQ+層の当該カテゴリーにおける消費状況を加味して算定(2020年の総務省の家計調査データを参照)した調査結果です。
LGBTQ+層の市場規模は5.42兆円と推測されます。
2015年の調査時の5.94兆円からは減少したものの、日本全体の人口減少、そしてパンデミック禍での家計消費全体が減少している中では、堅調な数字といえます。
教育・資格関連費や、書籍・雑誌・新聞費が伸びていることにも注目です。
また、ストレート層に比べ、医療・保険費(診療・市販薬・介護サービス・健康食品・サプリメント)においてLGBTQ+層の方がより消費金額が大きいことが分かりました。
このことからも、企業がLGBTQ+層に向けたアプローチをすることは得策であるといえるでしょう。
LGBTQ+フレンドリーな企業とは
では、LGBTQ+層から支持される企業は、どのようなことをしているのでしょうか。
こういった企業は一般に「LGBTQ+フレンドリー」な企業、という表現が成されますが、そもそもLGBTQ+フレンドリーとは、LGBTQ+に対するなにかしらの協力的な姿勢を示す言葉です。
企業が可能な具体的な取り組みとしては、さまざまな方法が考えられます。
一例は以下です。
- 社内規定の整備(差別禁止を明文化するなど)
- 提供サービスや商品の適正化(「夫婦」「男女」といった記載を改めるなど)
- CSRとしての対応(関連イベントに参加・協賛するなど)
- 福利厚生の充実(同性パートナーと子どもに対する家族手当など)
こういったアクションにより、LGBTQ+フレンドリーな企業とみなされれば、LGBTQ+層からの企業への信頼度は高まります。
これは「この企業で働いてみたい」という意識も芽生えさせるので、人材確保の点でも役立つといえるでしょう。
同時に、およそ72.7%のストレート層からの信頼度も高まるかもしれません。
また、企業が販売する商品においても、「夫婦」「男女」といった記載を改めることで、商品を支持する人数が増えることが推測されます。
「男性向けは青、女性向けは赤」といった固定概念を取り払うことも重要です。
現に、ランドセルはさまざまな色が販売されており、「男子は黒、女子は赤」という古い慣習がなくなりつつあります。
今後、企業は当たり前のように横たわる差別的な言い回し・通念などをいかに撤廃できるかが課題となってきます。
そして、個人としてLGBTQ+をサポートをしたいのであれば、購買時にLGBTQ+フレンドリーな企業の商品を選ぶことは大切な選択となります。
まとめ
LGBTQ+層の日本の市場規模やストレート層の意識・知識、そしてLGBTQ+フレンドリーな企業としてできる取り組みについてご紹介しました。
SDGsが世界的に注目される今、環境への配慮などともに、LGBTQ+への差別・偏見をなくすことはすべての企業が志すべきことであるといえます。
これは社会に貢献できるだけでなく、企業イメージを向上させることにも繋がります。
まずは職場の風土を変えることから始めてみてはいかがでしょうか。