保険は、将来に起こるかもしれないリスクに備えるための制度です。強制加入の国民保険をはじめ、さまざまな民間保険に入っている方もいるでしょう。一方で、保険はリスクヘッジ以外にも税金対策として役立ちます。
我々の生活にかかる負担を軽減するには、節税方法も知っておいた方が得策です。この記事では、保険と税金対策の関係性について説明します。
この記事の目次
保険が税金対策に有効な理由
保険が税金対策に有効な理由は、主に3つあります。
- 損金(経費)として認められる
- 相続税の節税にも役立つ
- 所得金額から保険料控除を差し引ける
それぞれの細かい内容を押さえてください。
損金(経費)として認められる
会社の経営者であれば、保険が損金(経費)として認められます(※1)。例えば、経営している法人が養老保険を契約したとしましょう。養老保険とは被保険者が期間満了まで生きたら満期保険金、期間中に亡くなったときは死亡保険金を支給する制度です(※2)。
法人が保険料を支払う際には、そのうちの半分を損金に計上できます(※3)。法人の所得の算出方法は「益金(売上収入など)-損金(保険料や販売費など)」です(※4)。保険料の支払いは所得金額を少なくし、結果的に法人税が抑えられます。ほかにも、定期保険や第三分野保険(法人向けの医療保険など)も損金の対象です(※5)。算入できる割合は、各保険によって異なります。
相続税の節税に役立つ
ここでは被保険者(夫)が亡くなり、死亡保険金が支給されたと仮定しましょう。この場合、死亡保険金がどの税金の対象になるかは契約次第で変わります。主な例が以下のとおりです。(※6)
契約内容 | 税金の種類 |
契約者(夫)、被保険者(夫)、受取人(妻や子) | 相続税 |
契約者(妻)、被保険者(夫)、受取人(妻) | 所得税および住民税 |
契約者(妻)、被保険者(夫)、受取人(子) | 贈与税 |
支給される保険金は、みなし相続財産と認められます。そのため、相続税として納める場合は「500万円×相続人」で算出される非課税枠の利用が可能です(※7)。3,000万円の死亡保険金を受け取ったとしても、妻と子を合わせて相続人が4人いたら非課税分の2,000万円を控除できます(500万円×4人)。
無論、所得税や贈与税にも控除される仕組みが存在します。しかし、算出方法は異なるため注意が必要です。とくに、贈与税は基礎控除額の110万円分しか保険金から差し引けません(※8)。一般的には、相続税より税額が上がりやすいとされています。そのため、相続税の形で支給できるよう契約することがおすすめです。
所得税や住民税を抑えられる
納めた保険料は、合計所得から差し引けます。この制度はサラリーマンのみならず、個人事業主も利用が可能です。サラリーマンの場合は、12月の年末調整で「給与所得者の保険料控除申告書」を提出します(※9)。個人事業主であれば、確定申告しなければなりません。
どちらも、原則として「生命保険料控除証明書」の添付が必要です(※10)。仮に今年度分を提出し忘れても、過去5年間であればさかのぼって申告できます(※11)。税金対策のためにも、申告は欠かさず行いましょう。所得税および住民税、保険料控除の具体的な仕組みについては後述します。
保険料控除と税金の関係
保険料を支払うと、保険料控除で税金対策ができます。保険料控除は大きく旧制度と新制度に分かれます(※12)。旧制度は2011年12月31日まで、新制度は2012年1月以降の契約のことです。これらの違いを押さえつつ、税金との関係を説明します。
新制度の保険料控除の種類3つ
新制度の保険料控除の種類は大きく分けて次の3つです。(※13)
- 一般生命保険料控除
- 個人生命保険料控除
- 介護生命保険料控除
一般生命保険料控除は、死亡保険や学資保険の保険料が対象となります。個人生命保険料控除は、個人で加入する保険により控除される制度です。主に終身年金や確定年金が該当します。
介護生命保険料控除は、介護と医療に関する保険を契約した方が控除を受けられる制度です。新制度から登場した制度であり、旧制度には当該項目が存在しません。入院特約や先進医療特約が主な対象です。
保険料控除額の上限
保険料を納めると、一定額が所得税と住民税から控除されます。ただし、控除額には上限が設けられています。旧制度と新制度で異なるため、違いを正確に理解しましょう。申告方法における上限額の違いを表でまとめます。(※14)
契約の種類 | 各保険料控除の上限(一律) | 上限額の合計 |
旧制度のみ
(年間の払込保険料:所得税10万円超、住民税7万超) |
所得税5万円
住民税3万5,000円 |
所得税10万円
住民税7万円 (一般生命保険料控除+個人生命保険料控除) |
新制度のみ
(年間の払込保険料:所得税8万円超、住民税5万6,000円超) |
所得税4万円
住民税2万8,000円 |
所得税12万円
住民税7万円 (一般生命保険料控除+個人生命保険料控除+介護生命保険料控除) |
旧制度と新制度を併用 | 所得税4万円
(旧契約は5万円) 住民税2万8,000円 (旧契約は3万5,000円) |
所得税12万円
住民税7万円 (一般生命保険料控除+個人生命保険料控除+介護保険料控除) |
ここで注意しないといけないポイントは、2つの契約を併用している場合です。旧制度と併用しても、合計額は新制度の上限額が適用されます。一方で、旧制度のみでは介護医療保険が対象となりません。自分の環境と見比べつつ、申告方法を選びましょう。
http://research-online.jp/all/property/15993/
http://research-online.jp/all/property/15841/
http://research-online.jp/all/property/15463/
まとめ
今回は保険と税金対策の関係性を解説しました。支払っている保険料は、所得税や住民税から差し引けます。ただし、契約方法に応じた上限額が設けられています。保険料は、必要経費としての算入も可能です。
保険金が支給された場合、みなし相続財産として認められます。したがって、相続税の非課税控除枠が適用されます。相続人が多い場合は、保険について見直すといいでしょう。保険だけでは不安な方は、税金対策のご相談はリサーチ・オンラインまでお問い合わせください。