ドゥテルテ氏逮捕の背景
– 「麻薬戦争」とは?
1.1 逮捕の経緯とICCの訴追理由
ドゥテルテ氏は2016~2022年の大統領在任期間中に、違法薬物撲滅の名目で「麻薬戦争」と呼ばれる大規模な取り締まりを実施。この政策により、警察発表では6,000人以上、国際人権団体の推計では3万人以上が殺害されたとされています。
ICCは**「人道に対する罪」に該当すると判断し、ドゥテルテ氏が2011年から2019年にかけて少なくとも43件の殺害に関与**した疑いを追及。2025年3月11日、マニラ空港で身柄を拘束され、同日中にオランダへ移送されました。
逮捕から移送までのプロセス
2.1 逮捕の流れ
- 3月11日朝 – ICCが逮捕状を発行、フィリピン政府が受理
- 3月11日午後 – マニラ空港でドゥテルテ氏を拘束
- 3月11日夜 – マニラ空港からUAE・ドバイ経由でオランダへ移送
日時 |
出来事 |
3月11日 朝 |
ICC逮捕状がフィリピン政府に通知される |
3月11日 午後 |
マニラ空港でドゥテルテ氏が逮捕 |
3月11日 夜 |
ドバイ経由でハーグへ移送 |
3月12日 未明 |
オランダ・ハーグのICC本部に到着 |
ICC(国際刑事裁判所)の役割と管轄権
3.1 ICCとは?
ICC(International Criminal Court)は、国際法違反の重大犯罪(ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略犯罪)を裁く世界初の常設刑事裁判所です。
項目 |
詳細 |
設立 |
2002年(ローマ規程に基づく) |
本部 |
オランダ・ハーグ |
加盟国 |
125カ国 |
公用語 |
英語、フランス語 など |
対象犯罪 |
ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略犯罪 |
3.2 フィリピンとICCの関係
フィリピンは2019年にICCを脱退しましたが、ICCはフィリピンが加盟国だった2011年11月~2019年3月の期間内の犯罪については管轄権を保持していると主張。今回の逮捕・移送もこの法的根拠に基づいています。
主要関係者の反応
4.1 フィリピン政府
フィリピンのマルコス大統領は「国際社会の信頼を得るために適切な法的手続きを踏襲した」と述べ、ICCの対応を支持する立場を示しました。
一方、ドゥテルテ氏の長女・サラ副大統領は「フィリピン政府が前大統領を外国に引き渡すことは主権の侵害」と非難。国内では賛否が分かれています。
4.2 国際社会
- アムネスティ・インターナショナル:「歴史的な正義の一歩」と評価
- ライズアップ(被害者遺族団体):「超法規的殺害の犠牲者にとって重要な節目」
今後の裁判の流れ
5.1 予審と本裁判
ドゥテルテ氏はハーグ到着後、ICCの予審裁判部に出頭し、証拠審査が行われます。ここで正式な裁判が開始されるかが決定します。
ステップ |
内容 |
時期(予測) |
予審裁判部での審査 |
証拠の確認、正式起訴の判断 |
2025年春~夏 |
本裁判の開始 |
ICC本裁判所での審理 |
2025年後半~2026年 |
判決の言い渡し |
無罪・有罪の決定 |
2027年以降 |
5.2 量刑の可能性
ICCで有罪判決が確定した場合、最大30年の禁錮刑、または終身刑が言い渡される可能性があります。
ドゥテルテ氏のICC移送が示す
国際司法の転換点
ドゥテルテ前大統領がICCの逮捕状により逮捕・移送され、「麻薬戦争」における人道犯罪の責任を問われることとなりました。
フィリピン国内では賛否が分かれる一方、国際社会は歴史的な正義の一歩と評価。今後の裁判の行方は、国家指導者の責任追及と国際司法の未来に大きな影響を与えるでしょう。