對木 博一 (一般社団法人日本衛生管理者ネットワーク 代表理事)
一般社団法人日本衛生管理者ネットワーク 代表理事
十文字学園女子大学 非常勤講師
長年、一部上場企業で人事労務と労働衛生の両面を同軸で捉えるユニークな発想と活動を展開。
はじめに
人生での最大の出来事といえば、結婚や出産により家族が増えることは大きなイベントになりますが、なんといっても最初の起点となるのは、学校を卒業し、社会に出ることがまずは最初の岐路と言えるでしょう。
ほとんどの方が、任意の企業へと就職しますが、そのすべてが希望していた企業とは限らず、たとえ希望どおりの企業においても、挫折を味わうことは少なくありません。
この記事では、そうした壁を乗り越えるべく、あらゆる場面を想定し、解決方法や対象方法などについて参考にしていただくものです。
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職場で心が折れる原因とそのサイン
人生において、壁となるものはさまざまなものが考えられますが、就職してまず最初に挙げられるのは、自分が思い描いていたイメージとは異なっていたといったケースです。
最近では、小学校の時分から、職場見学などと、様々な会社を体験する機会も増えてきましたが、そのほとんどがうわべだけを見てしまい、階下の内情などは、到底見ることはできません。
きらびやかに見える表面的なイメージだけでは、なかなか企業に内在する内情は見えてこないのが現実です。
実際に、せっかく希望の企業に就職しても、何らかの原因で挫折感を覚えて、数カ月で退職してしまうというケースも少なくないのが実態なのかもしれません。
しかしそれとは逆に、終身同じ会社に長く務める方もいらっしゃることから、企業風土や慣習と本人の価値観のミスマッチにより、仕事に魅力を見いだせず、心身の健康にまで影響することが現代の問題の一つです。
それらの価値観の相違は、大きなストレスとしてメンタル面に作用して、心身の不調につながることが言われています。
企業においては、人が集まり長く定着する職場もあり、逆に、せっかく採用した人材が、離職してしまい仕事がままならなくなる職場も存在するのも事実ですね。
ここでは、心が折れる職場の特徴とは、具体的にどのような職場なのか考えてみましょう。
急に体重が増えたり、減ったりしたら黄色信号の危険のサイン?
心が折れる感情は、仕事に内在する不安、人間関係などから、活気ややる気が阻害されることで、挫折感や焦燥感・意気消沈や敗北感・悄気込む・委縮など、様々な感情が表出すつことだと思います。
仕事は一人で行うのではなく、チームとして協力しあいながら結果を出していくものです。
当然そこでは上司同僚が互いに支えあい補完しているのですが、その支えを自分の予想に反して失うことは、予期せぬ出来事であり、意欲ややる気がレベルダウンし、いわゆる”折れてしまう”ことになります。
しかし、人の感情は、個性の異なる他人には推し量れないもの。
では、心が折れそうな悩みを抱えていると思う人に対して、どうすればいち早く気づいてあげることができるのでしょうか?一つのサインとして、急激な体重の増減が、なぜ心が折れそうな状況のサインになるのでしょうか?
タイプにもよりますが、人はストレスを感じてしまうと、それを和らげるため、自然とストレスを発散させる行為を行います。
特に食事は、欲しいものを食べるだけで多幸感が味わえ、食べることが不安を抑制してくれるため、過食を行うことでストレスを発散させる方も多いようです。
特に、お菓子など甘いものは簡単に摂取でき、高揚感もあることからストレス発散には最適ですが、食べ過ぎによる体重増加の危険性が増してしまうのです。
逆に人間関係のような心理・社会的ストレスは消化器系に作用するため、胃が痛いなどで食欲減退につながり体重減少という結果を招きます。
他愛もない話が悪口に聞こえたら危険のサイン?
フレンドリーな雰囲気の職場であれば、仕事中の適度なおしゃべりはお互いのコミュニケーションの潤滑剤となります。
しかし、誰かの他愛もないおしゃべりが、自分のことを言われていると気にかかるとしたら、あなたの心の状態は不調かもしれません。
実際にあなたの悪口を言われていることがあるかもしれませんが、普通に考えれば、悪口は本人に聞こえないところで言うもの。
あなたのことを指して話している訳ではないことがほとんどです。
職場の同僚との信頼関係を築き上げられていない場合、彼らのおしゃべりと自分の不安が結び付いてしまうのです。
そら耳と思って、ただの世間話だなと受け流しましょう。
理想的な職場環境の特徴とは?
特に若者の間で、退職理由として多いのが、自分が思い描いていた職場と違っていたといったような、あまりにファジーな感覚によるものです。
長年その会社にお勤めの方であれば、あまりに不可解な理由だと思われがちですが、そこには意外にも深い心理が存在しています。
例えば、「白衣の天使」として表現されることの多い看護師ですが、はたから見れば弱い患者さんを介護し、業務に対して真摯に挑む姿勢はまさに天使そのものといえます。
しかし、実際の職場は、汚物の処理やシーツ交換など看護学校で学んだことを仕事に生かすことができず、これが看護の仕事か?と理想と現実のギャップに陥り、活力低下と不安が増大します。
これをバーンアウトシンドローム(燃え尽き症候群)といいます。
さらに職場は野戦病院に近いものがあり、常に感染症や防菌対策にさいなまれ、病院によっては夜勤・準夜勤などによる心身のストレスも少なくありません。
話を若者にもどすと、職場によっては上司も含め、あまりにもくだけ過ぎで、私語が多かったり統制のとれていない状態は、やはり問題ありと言わざるをえません。
しかし逆に、あまりにも静かすぎていたり、ちりひとつも落ちていない整然としたオフィスで、機械的でミスも許されない職場も圧迫感を覚えてしまいます。
心が折れる職場を改善するための具体的な3つの方法
理想的な職場の定義とは、なかなか一言で言い表すことはできませんが、共通して言えるのは働き手に対して、いかに働きやすい職場であるかという点に尽きるでしょう。
そこで、職場でも働きやすい環境を作り出す為に、三つのポイントに絞って改善していくと、以外にも職場の雰囲気ががらりと変わっていきます。
安心して話せる職場環境を作る方法
学校を卒業し、特定の企業に就職すると、まず最初に戸惑うのが人間関係だといわれます。
学生の時代は、直接の上司は先生だけで、成績の優劣こそあれど、学生たちはすべてに平等で、平たく言えば同級生は利害関係が少なく、会社とは異なる人間関係と環境で生活をしています。
しかし、会社では、先輩以外にも各部署毎に上司がおり、仕事の結果を求められ、ともすると学生生活が抜けていないなと言われ、厳しい管理の中で仕事をしなければなりません。
ビジネスの世界ではどの会社でもミスは許されていません。
たとえ凡ミスでも、それが取引先などにかかわることであれば、上司を伴って相手先へと謝りに赴くといったことも決して少なくありません。
つまり、いつまでも学生時代のように、甘い考えを持っていると、大きなミスにつながってしまうといった危険性があるのです。
とはいえ、従業員たちが厳しい管理とともに不安に至らないためのリラックスできる状況を作り出すのも、会社の役割です。
企業によっては、従業員向けのサロンを設けているケースもありますが、交流の場があるとはいえ、ただ用意しただけでは活用してもらえないこともあります。
こうした自然な交流を楽しむためには、コミュニケーションを円滑にとることが重要ですが、まずは自己開示とともに職場の心理的安全性を改善することが必要です。
上司が取るべき部下への効果的なサポート方法
一昔前までは、職場を円滑に進めていく意味でも、上司や職場間での飲み会が長い間の慣習として当たり前のように行われてきました。
古い考え方で言えば、こうした飲み会の中で、先輩からのアドバイスを受けることは、仕事のコツや精神面から見てもメリットがありました。
しかし現在では、プライベートの付き合いは、時間のムダと考える若者も少なくなく、またアドバイスや助言はを小言に聞こえ、ストレスがたまるだけ!といったデメリットに感じることが若者の多数意見となりつつあるのではないでしょうか。
もちろん、現在でもこうした飲み会が行われていますが、あまり連夜にわたり過ぎてしまえば、弊害となってしまうことを職場の上司は胸にとめておく必要があるでしょう。
また、公私混同で、ずけずけとモノを言ったり、無用な仕事を押し付けてしまうのも、ハラスメントと受け取りかねません。
とはいえ、職務に対して、長年のノウハウを持つ先輩たちの言葉は、決しておろそかにしてはならない貴重な意見となります。
そこで、上司の立場としては、無理強いや押し付けとならないよう言葉を選びながら、簡潔にそして的確なサポートが求められています。ブラックは問題ですが、ホワイトすぎる企業の離職率も低くありません。
職場でのコミュニケーションを増やす工夫
文部科学省のゆとり教育の影響か、近ごろの若者はメンタル面に特に弱いと言われています。
また、インターネットやスマートフォンの普及により、より快適なライフスタイルが可能となりましたが、ソーシャル・ネットワーキングの利用が、今では当たり前となってきました。
しかし、一方で弊害も指摘されており、近ごろマスコミなどで話題となっている、個人を攻撃したヘイトクライムは、深刻な社会問題となっています。
また、仕事面でもスマートフォンを多用する場面も多く、メールやメッセージなどによる返信を、早く返さなければならないプレッシャーも、心の負担と感じている方も少なくないといいます。
そうした中、他人との会話は極力控え、仕事以外にはあまり他人と関わりたくないといった方も増えてきました。
確かに、他者とのかかわりが薄ければ、それだけ心に負担がかからないように見えますが、あまり長期にわたってしまえば、かえって職場で孤立してしまうことにもなりかねません。
人間は一人では生きていけないし、仕事ならばなおさら組織として活動することをもとめられているならば、自分のストレスを気にするあまり、自分を中心に置きすぎると対人関係能力が欠損した偏った人間になってしまうことも心配ですね。
職場環境を改善して、明るく働きやすい職場を実現しよう
長い人生、心が折れてしまう場面は、誰しもが体験することです。特に、ミスがほとんど許されない職場において、ちょっとした失敗が大きな挫折を招いてしまう事もあり得ます。
人生の中で、仕事の現場では、少なからずプレッシャーがあるものですが、これまでに解説したように改善策を知り、自らが中心になって明るい職場を取り戻していくのも一つの方法です。
ただし、問題点として、自らが役職を持っている立場ならまだしも、入社したばかりの社員が提案するのも考えもの。
そこで、現場の管理職からの意識的な働き掛けが行えるよう、自分の心の内を相談してみるのも一つの手です。
現場で働いていて、「仕事に息が詰まってしまう」「相談できるものは誰も居ない」「過度なストレス」などを感じたら、まずは自分を冷静に見つめなおして自己理解をすすめ、さらに自らを示していくが自己を開示し、こちらから問いをしてみて話を広げたあとに、他人を理解すれば、相手も心を開示してくれるという関係に持ち込めるはずです。職場が明るくなることはとてもいいことでしょう。
ゆとりのある職場をつくることは、働きやすい職場でもあるのです。
對木 博一 (一般社団法人日本衛生管理者ネットワーク 代表理事)
一般社団法人日本衛生管理者ネットワーク 代表理事
十文字学園女子大学 非常勤講師
長年、一部上場企業で人事労務と労働衛生の両面を同軸で捉えるユニークな発想と活動を展開。
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