女社長のセクハラ被害、なぜ止まらない?日本のビジネス界で増加する女性へのハラスメント問題 【監修:對木博一氏】

この記事のポイント

特に、次のような方に読んでいただきたいです:
  1. 人事部や経営層の方々:職場でのセクハラ防止策の実施と効果的な監督方法を学び、全社員に安全で健全な労働環境を提供するための知識を得たい方。

  2. 女性起業家および女性ビジネスリーダー:性差別やセクハラに直面する可能性に備え、これらの問題に効果的に対処し、自己の権利を守る方法を学びたい方。

  3. 新入社員から中堅社員までの若手従業員:職場での適切な振る舞いとセクハラ防止の基本を理解し、健全な職場文化の構築に貢献したい方。

この記事は、セクハラ問題について解説した記事です。

  1. 日本のビジネス環境における根深い性差別:記事では、日本のスタートアップ業界を例に挙げ、女性起業家が性的な提案を受けるなどのセクハラが常態化している問題を指摘しています。これが女性のキャリア進展や業界での発言力を制限していると述べています。

    2. 法的対策と企業の対応:2007年の男女雇用機会均等法改正により、セクハラ防止が事業主の義務とされていますが、実際の職場での実施状況には改善の余地があると指摘。企業内でのセクハラ防止策として、政策の明確化や教育の徹底が求められています。

    3. 社会全体での意識改革の必要性:セクハラ問題は個々の問題に留まらず、社会全体の認識と行動の改革が必要であると強調しています。公平で健全な職場環境を実現するためには、ジェンダー平等と相互尊重の文化を育む努力が必要です。

連動記事:

【この記事を監修した人】

對木 博一 (一般社団法人日本衛生管理者ネットワーク 代表理事)
一般社団法人日本衛生管理者ネットワーク 代表理事
十文字学園女子大学 非常勤講師
長年、一部上場企業で人事労務と労働衛生の両面を同軸で捉えるユニークな発想と活動を展開。


はじめに

最近の報道によると、日本のビジネス界では起業家が直面する問題が浮き彫りにされています。特に経営者や起業家が経験するセクハラ問題は、社会全体の注目を集める事態になっています。

この問題は、ただの個別の事件ではなく、組織全体の構造的な問題を反映しており、その影響によってキャリアや将来の夢を諦めざるを得ない状況に追い込まれていることも事実ですます。

NHKの報道では、「女性起業家の半数がセクハラ被害に遭っている」という衝撃的な事実が報じられました。ここから女性をターゲットに話題展開か?

このデータは、日本のスタートアップ業界における性差別の実態を如実に示しており、多くの人々に衝撃を与えています。

これらの事実は、日本がいまだに男性優位の社会であるかを示しており、根本的な改革が必要であることを訴えています。

日本は、女性の管理職ウェイトや大臣の数が、世界の中でも低い位置にあります。

参考データについて

厚生労働省の「令和4年度雇用均等基本調査」によると、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は12.7%でした。

また、女性が部長相当職以上を務める企業の割合は約1割、課長相当職以上を務める企業の割合は約2割です。

諸外国では管理的職業従事者に占める女性の割合が概ね30%以上であるのに対し、日本では低い水準に留まっています。

ドイツでは28.9%、韓国では14.6%、米国では41.0%、フランスでは39.9%などです。

組織に質的な変化を起こし、女性活躍推進の効果を実感するためには、マイノリティがマイノリティでなくなる必要最低限の割合である「クリティカル・マス」と呼ばれる30%という割合が達成されることが重要です。

国別の女性管理職比率は、次のとおりです。

  • フィリピン:48.6%(最も高い)
  • アメリカ:42.6%
  • イギリス:40.2%
  • シンガポール:39.6%
  • インド:12.6%(最も低い)
  • 日本:14.6%
  • サウジアラビア:15.1%

日本は、先進国やアジアの新興国と比較しても女性管理職比率が低い水準にあります。

管理職における男女平等の項目では、146カ国中130位という順位です。

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日本のスタートアップ業界における性差別

日本のスタートアップ業界は、革新的なアイデアと技術で注目されがちですが、その背後には性差別という深刻な問題が存在しています。

女性起業家が投資家やビジネスパートナーから不適切な提案を受けるケースが後を絶ちません。

例えば、仕事を振る代わりに「100万円で愛人になってくれ」といった露骨なセクハラ発言が、ビジネスの場で平然と行われているのです。

これらの行為は、女性がビジネスパートナーとしてではなく、性的な対象として見られていることを示しています。

また、金融庁の調査によると、新規上場企業における女性社長の割合はわずか2%に過ぎません。

この低い割合は、女性が経営の最前線で直面する障壁がいかに高いかを示しており、性差別が企業文化に根ざした性差別があると推察できます

これらは、日本のビジネス環境における男性優位の構造が、女性の才能を見出して活用するチャンスを逃しています。


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実際の経験談について

Aさんの経験談

Aさんは、かつてスタートアップ企業で営業職として働いていましたが、セクハラとパワハラが原因で転職を余儀なくされました。

「新卒で入ったスタートアップでは、男性が圧倒的多数を占め、女性は常にマイノリティでした。私が耐えた5年間で、何人もの女性がセクハラに耐えかねて退職していきました」とAさんは語ります。

彼女自身も、不適切な言動に晒され続けた末、業界を去る決断をしました。

これらの経験談は、日本の企業風土の中で女性が直面する困難を浮き彫りにするのです。

職場での具体的なセクハラ事例とその影響

Aさんの話によると、職場でのセクハラは日常茶飯事だったとのこと。

「上司や同僚からの性的な冗談や不適切な接触が頻繁にあり、そのたびに気分を害しました。最も辛かったのは、仕事の成果を認められることよりも、外見や性的魅力が評価の対象となることでした」と彼女は言います。

さらに、「飲み会では、上司から無理やりキスを迫られたり、明らかにプライベートな関係を求められることもありました。これが原因で精神的にも肉体的にも大きなダメージを受け、最終的には仕事にも支障をきたすようになりました」と続けます。

これらの経験は、Aさんだけでなく、多くの女性が職場で直面していることが類推できるはずです。

セクハラが職場環境に与える影響は計り知れず、被害者のキャリアだけでなく、その健康にも深刻な影響を及ぼすとともに、職場の雰囲気や人間関係までも影響します。

さらには仕事の生産性の低下まで起こします。

このような問題に対処するためには、企業文化の改革と法的な裏付けが急務となっているのです。

業界の構造問題

女性起業家が直面する障壁としてのセクハラ

日本のビジネス界、特に新興企業やスタートアップのセクターでは、女性起業家が直面する障壁の一つとしてセクハラがあります。

これは、資金調達の場、ビジネスミーティング、さらには業界ネットワーキングイベントに至るまで、様々な形で現れます。

女性が自らのビジネスプランを提示する際に、性的な提案と引き換えに投資を申し出るケースも報告されています。

このような環境は女性が事業を拡大する機会を大きく制限し、多くの有能な女性が起業を諦める要因となっています。

企業文化と男女比の問題

日本の企業文化における根深い男性優位の態度は、企業内の性差別を助長しています。

特にテクノロジーや金融をはじめ製造業などでも、女性の割合が少なく、これが不平等や偏見をさらに深めることになります。

金融庁の最新の統計によると、新規上場企業の女性経営者は依然として少数派です。

この男女比の偏りは、女性が同じ業績を上げても評価されにくいという問題を顕在化しており、女性が上層部に進出することを困難にしています。

これらの構造的ともとれる問題に対して、企業は意識改革を図り、積極的な女性の登用を促進する政策を導入する必要があります。

また、法律に基づいたセクハラ防止のための具体的なガイドラインの設定と、違反した場合の厳格な対応を就業規則に定めることが重要です。

対策と解決策

企業と社会がどのようにしてセクハラ問題に対処すべきか

セクハラ問題への対処は、単に個別の案件を処理するだけでなく、企業の内面からの改革が必要です。

企業は、セクハラを許さない明確なポリシーを策定し、従業員全員にそのポリシーを徹底することが求められます。

また、セクハラの申し立ては外部の第三者機関に委ねること、その対応には、公正かつ迅速に対応する体制を整える必要があります。

社会全体としては、セクハラ問題に対する認識を高めるために、E-ラーニング等による教育の徹底を行い、被害者が声を上げやすい環境を作ることも重要です。

これには、メディアや教育機関が積極的に関わることも含まれます。

法規制、企業ポリシー、教育の重要性

日本では、セクハラ対策の法規制が強化されつつありますが、まだまだ改善の余地があります。

企業は、法律に基づくだけでなく、自社の倫理規定をさらに厳格にするべきです。

例えば、セクハラ防止研修を定期的に実施し、新入社員から経営層まで全員が参加することで、問題の深刻さと自身の責任を理解させることが重要です。

また、セクハラの定義を明確にし、どのような行為がセクハラに該当するのかを全従業員が理解できるようにする必要があります。

教育の面では、学校教育から職場研修まで、ジェンダー平等と尊重の精神を根付かせることが必要です。

これらの対策を通じて、企業と社会が連携してセクハラ問題に立ち向かうことで、より公平で健全な職場環境の実現を目指すべきと考えます。

専門家によるセクハラについての見解

本記事を監修する對木博一氏に”セクハラ”に関する見解についてお伺いしました。

セクハラの歴史的背景と要因

セクハラの要因として古くからある男女差別は、歴史的・文化的・社会的背景があり複雑に絡み合って生み出された問題です。

人類は男性が狩猟、女性は採集、産業革命では工場労働は男性、教育の機会も女性は制限されていたことが背景にあると思います。

セクハラでは、力関係の不均衡から上司が部下に行為を行う、会社で声を上げ得にくい雰囲気があること、支配欲が強いとか道徳観の希薄といった個人の性格や価値観も要因の一つになっています。

法律によるセクハラ防止策

2007年には、男女雇用機会均等法第11条でセクハラ防止のための事業主の義務付けが定められ、職場の定義は業務を遂行する場所、勤務時間外の宴会等も含まれます。

性的な言動は、性的な冗談・食事への執拗な誘い、身体への接触等とし、社内だけでなく取引先や顧客も対象です。

また、同性同士に対しても含まれています。

セクハラ対策のために事業主の義務付けられた措置は、事業主の方針の明確化と周知・啓発として、会社の方針を示し厳正に対処する内容を就業規則に規定、相談窓口設定、事後の迅速かつ適切な対応、相談者の不利益取り扱いの禁止などが挙げられています。

法律を順守するだけでもセクハラ防止となりますのでまずは体制整備から始めることが必要なのです。

まとめ

この記事を通じて、私たちが直面しているセクハラ問題の深刻さとその広がりを理解していただけたことでしょう。

問題解決に向けた第一歩は、一人ひとりがこの問題に真剣に取り組むことから始まります。

セクハラは個人の尊厳を侵害し、そのキャリアを著しく阻害する行為です。

読者の皆さんには、不適切な行動を見かけた際には声を上げ、行動に移す勇気を持っていただきたいと願っています。

また、周囲の人々がこの問題について話し合うきっかけにしていただければと思います。

セクハラ問題は、単なる個々の問題ではなく、社会全体の認識と行動の改革が求められる課題です。

組織や企業だけでなく、学校や地域社会も含め、ジェンダー平等と相互尊重の文化を育む努力が必要です。

具体的な教育プログラムの導入や、ジェンダーに関する誤解を解消する公共キャンペーンの展開など、さまざまなアプローチが考えられます。

このような取り組みを通じて、セクハラが許されない社会の基盤を築くことが、私たちの共通の目標であるべきです。

 

最終的には、この記事がセクハラ問題に対する意識を高め、行動を促す一助となることを願っています。

問題に立ち向かうことは容易ではありませんが、一人ひとりの小さな行動が大きな変化を生むことを忘れないでください。


【この記事を監修した人】

對木 博一 (一般社団法人日本衛生管理者ネットワーク 代表理事)
一般社団法人日本衛生管理者ネットワーク 代表理事
十文字学園女子大学 非常勤講師
長年、一部上場企業で人事労務と労働衛生の両面を同軸で捉えるユニークな発想と活動を展開。


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