日本の電機メーカー「東芝」が本格的に経営再建を目指すこととなりました。上場を廃止し、体制を立て直したうえで再上場を目指すようです。
東芝の経営再建をめぐっては、国内外のファンドが熾烈な争いを繰り広げています。大企業をも巻き込んだ東芝の買収は、未だ終着点が見えていません。
今回は、東芝の経営再建の概要と、買収を目指すファンドについて紹介します。国内大手企業の今後を占う大きな出来事について、理解を深めましょう。
この記事の目次
東芝の経営再建策について
ここでは、東芝の経営再建の概要について、再建に踏み切った経緯や目的を紹介します。
経営再建までの歴史
東芝の経営が傾き出したのは、2010年代後半からです。2015年には不正会計問題が発覚。2016年には買収したアメリカの原発事業を行う子会社が巨額の損失となってしまい経営危機に陥りました。2018年には利益の中心となっていた半導体事業を売却しており、経営状況の難しさが伺える状況でした。
2017年、東芝は上場廃止を阻止すべく海外の投資ファンドから6000億円の出資を受けます。この際出資に加わった「物言う株主」との関係性も経営に影響しています。株主総会では何度も意見が対立しており、会社と株主との関係性は良好とはいえません。
2021年のCVCキャピタル・パートナーズによる買収案もあっさりと頓挫。2022年の株主総会では東芝の案が否決され、経営は窮地に追い込まれました。
2022年4月、東芝はついに上場廃止を目指し再編案の公募を決定しました。複数のファンドの入札を経て、10月に優先交渉権を与えるファンドを発表し現在に至ります。
買収後の展望
東芝は買収によりファンドの子会社となり、現在私たちが価格を見たり購入したりしている株式は全て非公開となります。上場廃止とも言われるためネガティブな印象を抱きますが、企業の経営体制を立て直すには絶好の機会となるのが今回の買収です。
東芝は一度体制を立て直し経営状況を安定させたのち、再度上場を目指すとしています。今回の買収が正式に決まれば、東芝の経営体制には大きな変化があるかもしれません。
買収を目指す国内外ファンドとは?
東芝の買収を目指したファンドは複数ありましたが、現在買収が有力視されているのは次の2つです。
- 日本産業パートナーズ(JIP)
- 産業革新投資機構(JIC)
これらは元々合同で入札をしていたファンドでしたが、1次入札後に経営への考え方の食い違いから対立し、連合を解消しました。その後、それぞれ新たな連合を組織して入札に参加しています。ここでは、それぞれのファンドについて紹介します。
日本産業パートナーズ(JIP)
通称JIPと呼ばれる日本産業パートナーズは、10月に東芝から優先交渉権を受けたファンドです。今回の東芝の買収にはJIPが主導となり企業連合を作って入札をしています。
優先交渉権の獲得後、多くの企業が買収提案への参画を検討しています。
- 中部電力
- オリックス
- ローム
- 大成建設
- ゆうちょ銀行
- 三井住友海上
- 東レ
- JR東海
- 日本生命
現在JIPはこれらの企業から資金を集め、買収を実現しようとしている最中です。
一方、JIPは資金面に課題を残します。買収総額の引き下げを検討する報道も出ており、現在多くの企業に参画を呼びかけている状況です。提案を実現するには相応の出資額が必要なため、出資が少なければ交渉権は他のファンドに移る可能性もあるでしょう。
産業革新投資機構(JIC)
通称JICと呼ばれる産業革新投資機構は、JIPの次点となった政府系ファンドです。アメリカの最大手ファンド「ベインキャピタル」やアジアを拠点とするファンド「MBKパートナーズ」と連合を組み、海外ファンドの豊富な資金力を活かした買収提案をしました。
JICは10月時点では残念ながらJIPに及ばなかったものの、資金準備に苦労するJIPが買収を断念したとなれば、新たに優先交渉権がわたる有力候補といえます。東芝が売却した半導体事業にベインキャピタルが関与しているため、半導体事業の再編もあり得るとされています。
投資枠を4.5倍の9,000億円に設定したとの報道も出ており、資金面に関する不安はありません。JIPの代替ファンドとして、買収決定まで準備を進める様相です。
複数の候補が入札に名乗りをあげたが、現時点ではJIPとJICの一騎打ちとなっている。
元々は合同で入札していたが、1時入札終了後に、経営の考え方をめぐり対立。連合を解消し互いに買収を目指すことに。
http://research-online.jp/all/economy/15179/
http://research-online.jp/all/economy/15069/
http://research-online.jp/all/economy/15006/
まとめ
ここまで、東芝の経営再建について、買収に至った経緯や買収を狙うファンドについて紹介しました。
東芝は国内の電機メーカーでもトップクラスの知名度と実績を誇ります。長く幅広い家電を手がけてきており、人気ある商品も多く存在します。長らく苦しんだ経営体制を立て直し、日本を代表する電機メーカーとして再び輝きを取り戻してほしいところです。
買収は依然として不透明な部分が多く、決定は2023年にまたぐとも言われています。今後の報道に注視しましょう。
今回の東芝の買収が決まれば、TOB(公開株式買い付け)が実施される可能性があります。また、再上場時にはIPO(新規公開株)の銘柄に指定されることも考えられ、投資のチャンスともいえるでしょう。リサーチオンラインでは、投資や資産運用のご相談を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。