2022年12月、政府与党はNISA制度の投資額と上限を拡大することについて明らかにしました。2023年度税制改定大綱に盛り込まれる方向で調整が進んでいます。
現行のつみたてNISAは年間の積立金額上限40万円、投資可能期間は2042年まで、運用期間は20万円です。(※1)一方、新制度のつみたてNISAは、年間の積立金額上限は120万円、投資可能期間と運用期間は無制限へと変更されています。
この記事では、つみたてNISAの積立金額上限が40万円から120万円へ変更される背景や、変更後の詳細を解説します。現在つみたてNISAを運用している人はもちろん、これからつみたてNISAを始めたい人もぜひ参考にしてみてください。
つみたてNISAの年間投資額が40万から120万になる背景
金融庁によると、2019年末時点のつみたてNISAの総口座数は約1170万口座、総買付額が約2,300億円です。利用者は年々増えており、7割は10〜40代の若年層が利用しています。(※2)
現行のNISA制度は利用者も増え、資産形成の方法として普及してきているといえるでしょう。しかし一方で、現行のNISA制度は期限のある時限措置のため、非課税投資の期間が年々短くなってきています。
NISA制度を継続するため、投資可能期間と運用期間は無期限とする変更案が出されました。つみたてNISAの年間投資額が40万円から120万円に変更されるのは、政府が5年間でNISA投資額を現状の2倍の56兆円まで拡大させることを目標としているためです。
とはいえ、NISAの投資額上限を拡大させることで、金融資産保有額の大きい富裕層は恩恵を受けやすくなり、貧富の差が拡大することが懸念されます。この課題については、投資上限額を設定することで、対処することが決まりました。
つみたてNISA制度の変更後はどうなる?
では、新しいつみたてNISA制度は現行制度とどのように違うのでしょうか。現行制度と比較するため、以下の表にポイントをまとめました。
なお、この表は2022年12月時点の情報を参考にしたものです。今後変更になる可能性があります。
制度の種類 | 現行のつみたてNISA | 新しいつみたてNISA |
年間投資可能額 | 40万円 | 120万円 |
投資上限額 | 800万円 | 成長投資枠年間240万円と合わせて1,800万円 |
投資可能期間 | 2042年 | 無期限 |
運用期間 | 20年 | 無期限 |
成長投資枠とは、現行の一般NISAから名称を変更した制度です。2024年1月以降、一般NISAは「成長投資枠」と名を変え、年間投資可能額は現行の120万円から2倍増え、240万円となります。
新しいつみたてNISAの投資上限額1,800万円のうち、成長投資枠は1,200万円が上限です。つまり、新しいNISA制度では、つみたてNISA120万円と一般NISA(成長投資枠)240万円を同時に運用し、最大年間360万円を運用できるようになります。
前述のとおり、投資上限額が1,800万円と決められているのは、資産が富裕層へ偏るのを防ぐためです。
新しいつみたてNISAで年間120万円、つまり月10万円を年率3%で10年間積み立てた場合をシミュレーションしてみましょう。
上記の条件でつみたてNISAを運用すると、10年後には投資額(元本)は1,200万円に対し、運用益として約197万円が得られる計算です。もちろん、市場は計算通りには動かないものですが、シミュレーション上は銀行の普通預金口座に資産を預けておくより、つみたてNISAで運用したほうが運用益は大きくなります。
また、現行のつみたてNISA制度で年間40万円、月3万円を年率3%で10年間運用した場合のシミュレーションは以下のとおりです。
現行のつみたてNISAの場合、積み立てられる金額が少ないため、得られる運用益も10年間で約59万円です。年間120万円投資できる新しいNISAのほうが、投資できる金額が大きい分、約3倍の運用益を得られます。
http://research-online.jp/all/asset/15259/
http://research-online.jp/all/asset/15138/
http://research-online.jp/all/asset/14932/
まとめ
つみたてNISAを含め、NISA制度は2024年から変わろうとしています。より投資可能額が大きくなり、投資可能期間や運用期間にも制限がなくなります。
一般NISA(成長投資枠)との併用も可能になるため、より多様な使い方ができるようになるでしょう。
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