年金対策を講じていくうえでは、日々の経済のニュースにも目を通さなければなりません。世界の経済状況を把握することが、老後の人生にも大きな影響を与えます。
ここでは、日本の年金制度に欠かせないGPIFが、海外不動産に数千億円を投資したニュースを取り上げます。年金に関する知識として、ある程度覚えておくといいでしょう。
この記事の目次
GPIFとは
GPIFの名称自体を初めて聞いた方も決して少なくないでしょう。当該機関は、我々の人生を支えている必要不可欠な存在です。どういった目的で設立され、具体的にどのような活動をしているか紹介します。
GPIFの概要および沿革(※1)
GPIFの正式名称は、「年金積立金管理運用独立行政法人」です。主に日本の公的年金(国民年金・厚生年金)の管理および運用を担当しています。昭和36年に年金の運用を目的として、年金福祉事業団が設立されました。
平成8年に内閣総理大臣へ就任した橋本龍太郎(第二次政権)の改革により、平成13年4月1日に年金資金運用基金が誕生します。さらに、業務を引き継ぐ形で平成18年に現在のGPIFとなりました。
GPIFの役目は年金積立金を増やすこと
GPIFの役割は、公的年金を運用して国民に不足なく支給できる環境を作ることです。日本の年金制度は修正積立方式(※2)を採用しており、現役世代が高齢者に対して負担しています。しかし、少子高齢化の影響で若者の負担が年々増えています。
最悪の場合、将来世代に支給する年金が足りなくなるかもしれません。こうした危険性を防ぐべく、GPIFが年金積立金の一部を投資に使っています。日本の年金制度を維持するうえで、非常に重要な存在です。
GPIFはバランス良く分散投資している
では、GPIFが実際に年金積立金をどのように運用しているか説明しましょう。運用状況は、GPIFの公式ホームページから確認できます。2022年6月時点では、国内債券・外国債券・国内株式・外国株式がそれぞれ約25%ずつになるよう分散投資(※3)しています。
収益額は、2021年と比べると合計で約3兆円減少(※4)しました。一方で、2021年と比較すれば約101兆円増加(※5)しています。上下動を繰り返しながらも、確実に運用成果を伸ばしていることが特徴です。GPIFの理事長も運用成績について入念な分析を行っています(※6)。
投資する背景
GPIFは、2022年9月のニュースで株式や債券以外にも海外不動産へ投資することを決めました。投資額は数千億円と非常に多くの金額となっています。GPIFがこのような決断を下した背景について解説しましょう。
海外不動産への投資はリスク分散の一環
GPIFは、2014年2月にインフラへの投資を開始(※7)しました。この動きにより、株式や債券以外の代わりとなる資産を増やしています。ちなみに、こういった代替資産へ投資することをオルタナティブ投資と呼びます。リスク分散には欠かせない方法です。
海外不動産への投資も同様に、オルタナティブ投資の一環と考えられています。予算の規模も詳しく決まっていないものの、今後の動向には注目が集まるでしょう。
みずほ銀行・米国の不動産会社の協力が得られる予定
海外不動産への投資は、GPIFのみで運用するわけではありません。協力が得られる予定の企業についてまとめました。(※8)
協力する企業の名称 | 役割 |
みずほ銀行 | ゲートキーパー |
ラサール・インベストメント・マネージメント | ファンド・オブ・ファンズ・マネージャー |
ゲートキーパーであるみずほ銀行は、投資全体のリスク管理(※9)を行います。資産の価格変動を観測し、GPIFへ助言をすることが主な役目です。
ファンド・オブ・ファンズ・マネージャーは、実際に資産を運用する専門家(※10)を指します。ちなみに、ファンド・オブ・ファンズの意味は複数の金融資産に投資する「外部委託型の投資信託(※11)」です。
つまり、アメリカの不動産会社であるラサール・インベストメント・マネージメントに委託して運用がなされます。
とはいえ、みずほ銀行もラサール・インベストメント・マネージメントも詳しい情報を公開していません。今後、新たに方向性が公表される予定です。
GPIFのオルタナティブ投資の成果
先ほども説明したとおり、GPIFはインフラをはじめさまざまなオルタナティブ投資を実行しました。不動産への投資は、今回の件で4回目(※12)です。2014年当初のオルタナティブ投資のみの時価総額は5億円だったものの、2022年3月には2兆円を超えています(※13)。
2022年3月の成果(オルタナティブ投資のみ)を細かくまとめた表が以下のとおりです。(※14)
資産の種類 | 時価総額(2022年3月) |
インフラ(一任・自家) | 約1兆788億円 |
不動産 | 約7,731億円 |
PE(一任・自家) | 約3,066億円 |
今後、海外不動産への投資でどのような成果を出せるか注目したいところです。
まとめ
我々の年金は、月々納めている年金保険料とGPIFの資産運用などによって成り立っています。そのため、記事で紹介したGPIFの運用成果なども知っておくと、今後の年金対策にも役立つでしょう。
ただし、ニュースを見ただけではどのように対策すべきかがわからないはずです。もし年金対策でご相談があれば、リサーチオンラインまでお問い合わせください。