
旅行会社大手のHISが、長崎にあるテーマパーク「ハウステンボス」を売却することになりました。
コロナ禍の影響で、旅行業界は厳しい経営状況になっています。ハウステンボスを売却に至った経緯と、HISがどのような企業なのかについて紹介します。
この記事の目次
ハウステンボスを売却した経緯
コロナ以前より、HISではハウステンボスの売却を検討するようになっていました。ハウステンボスの売却総額は約1,000億円規模となる見込みです。
HISはこの売却で、落ち込んでいる海外旅行事業などの財務立て直しをする予定です。
ハウステンボスとは
ハウステンボスは、長崎県佐世保にあるテーマパークです。
建設費用は約2,200億円、1992年3月にオープンしました。
オランダの町並みを再現し、千葉県にある人気のテーマパークよりも1.5倍広い敷地面積があります。日本最大の単独テーマパークです。
四季を通じて行われるイベントが有名で、特に1,000種を超えるバラが咲き乱れる春のシーズンは大勢の観光客で賑わいます。
2022年に30周年を迎え、九州・山口の中でも満足度が高い観光地として知られます。
HIS傘下になったのは2008年から
ハウステンボスは、バブル崩壊の影響で、1992年の開業当時から赤字が続いていました。2003年には会社更生法を申請しています。当時は、野村ホールディングス系の投資会社で支援を受けていました。
2008年に、地元の佐世保市や経済界の働きかけにより、ハウステンボスはHISの傘下に入ることとなりました。
今のような年間で数々のイベントを行う形式になったのは、現在のHIS取締役会長澤田氏が経営に乗り出してからになります。
澤田氏がハウステンボスの社長に就任してから、2010年より10期連続で黒字を達成しています。
ハウステンボス2022年の業績は黒字
ハウステンボスグループの、2021年10月から2022年3月までの業績は黒字でした。年間を通じたさまざまなイベントや経営努力により、入場者数は前年比133.7%になっています。
営業利益も4億円となって、2期ぶりの黒字と公表しています。
HISってどんな会社?
正式名称は「株式会社エイチ・アイ・エス」。旅行業を主体とする旅行業者です。1980年創業で、格安航空券や日本国内外のパッケージツアー・フリープランの旅行を取り扱っています。
旅行業界の中では新しい企業で、特に国外のアジア系観光地の取り扱いではトップシェアを誇ります。
本社は東京都港区にあり、東証プライムに上場、銘柄コードは【9603】です。
HISの事業内容
HISは複数のグループ事業をおこなっています。
- 旅行事業
- テーマパーク事業
- ホテル事業
- 運輸事業
- エネルギー事業
- その他
HIS決算で黒字なのはテーマパーク事業のみ
コロナ禍の影響で海外旅行に出かける人の数が減り、旅行事業は赤字が続いています。ホテル事業やバスの運行をおこなう運輸事業も同様の理由から赤字となりました。
またエネルギー事業は、電力調達価格の高騰が影響し、5月に電力事業を光通信グループに売却しています。
2022年10月期の第2四半期決算
2022年10月期の第2四半期決算で、HISの売上高は684億9,100万円でした。営業利益は▲281億3,000万円と赤字になっています。
また2022年10月期の連結業績予想は、新型コロナウイルス感染症の影響により算定が困難なため「未定」としています(※1)。
マイナスになった理由は、以下の2つによるものが大きいようです。
- 新型コロナウイルス感染拡大の影響
- ウクライナ情勢などによる原材料価格の上昇
旅行事業ではGotoトラベルの不正受給も発覚していた
HISの子会社では、GoToトラベル事業に対する不適切な給付金受給がおきました。不正受給をおこなったのは、ミキ・ツーリストとジャパン・ホリデートラベルの2社です。
2021年12月、HISが調査委員会の結果を記者会見で発表しています。
不正受給の金額は、以下の通りでした。
- ミキ・ツーリスト:4,080万円
- ジャパン・ホリデートラベル:6億4,249万円
合計6億8,000万円を超える金額を受け取っていたとしています。
不正受給はホテル運営会社JHATの宿泊施設を利用し、実態のない宿泊契約でおこなわれました。HISでは子会社の不正を陳謝して、給付金を返還しています。
ミキ・ツーリストの社長は解任、ジャパン・ホリデートラベルの社長も厳しく処分されています。
まとめ
HIS傘下のハウステンボスは、黒字であるにもかかわらず売却が決まりました。売却に至った理由は、HISグループ全体の経営状態の悪化によるものです。売却額は1,000億円に上り、HISでは売却益で落ち込んでいる事業の立て直しを図ります。
コロナウイルス感染症の収束が見えない中、HISがどのような経営をしていくのかが気になります。
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