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はじめに
少子高齢化が押し進み、今や誰もが目を背けることができなくなった年金問題は、世代によって認識が随分異なっていると言われます。
現在の年金受給者やそれに近い年代の人々は眉をひそめる程度かもしれませんが、30代~40代の世代は老後を考えると暗鬱たる気分になりがちです。
1990年代初頭から叫ばれつつあった年金問題は、ここに来て一気に社会的な大問題へ変貌を遂げています。特に「老後のために2000万円の貯金が必要」と言われた世代は大きな衝撃を受けています。
2000万円は難しいかもしれない、でも年金だけでは心許ない老後の資金のために少しでもできることは?
少子高齢化が招いた若い世代の将来的な「納め損」とは
日本の公的年金は、若い世代が納めた年金を予算とし、年金受給者世代に支給される形式になっています。年金受給世代も現役時代は年金を納めていたわけですから、受給する権利は充分です。
しかし極端な少子高齢化が進むにつれ、支給する年金の財源の確保が難しくなってきているという事実があります。単純に言えば、支給する年金に対し、資金となる税金を納める若年層が減りすぎているのです。
少子高齢化は国が本腰を入れて対策を始めましたが、現状、将来的に充分な年金の確保が難しいという見方が優勢です。
つまり現在、毎月高額な年金を納めている若年層は、いざ年金受給者となった時、充分な額の年金を受け取ることができない可能性が高くなっている状況なのです。これを「納め損」と呼ぶ人もいます。
実際、誠実に年金を納め続けたとしても、自分が受け取れる年金額は、納めた年金の半分程度、あるいはそれよりも低くなるという計算もされている状態です。
更に年金制度が発足した時代と比較すると、物価が上がっている事実もあります。今後数十年間も同様のことが起こるでしょう。受給できる年金額は減り、物価は上がる、という、負のスパイラルを覚悟するべき時代なのです。
少額でも貯金の開始、そして付加年金の備えをする
老後2000万円が必要であると言われる時代、嘆いているばかりでは老後の不安に打ち勝つことはできません。2000万円に届かないとしても、今からできる限りの資金を用意する必要があります。
まずできることは貯金です。毎月ほんの少しでもいいですし、年に数万円、数十万円でも積み立てていくべきでしょう。最近では優れた個人年金商品も銀行からリリースされています。
貯金や個人年金商品だけでは心許なかったり、その余裕が現状でないという人が覚えておくべきシステムとして、「付加年金制度」が挙げられます。これは第一号被保険者が利用できる制度です。
付加年金制度とは、納付している年金に毎月400円を加えることによって、将来的に受給できる年金額が増えるという仕組みになっています。上乗せされる金額は「200円×付加年金制度納付期間」です。
第一号被保険者に向けられたものですので、一般の会社員や公務員、扶養に入っている人が利用できないシステムである点が悔しいのですが、自営業などで身を立てている人ならぜひ利用するべき制度です。
付加年金制度は第一号被保険者であれば誰でも利用可能です。学生でも対象になりますので、早いうちから念のために取り入れておくと良いでしょう。
未納期間を少しでも埋めるために「高齢任意加入」を使う
国民年金は20歳~60歳の間、誰もが必ず払わなくてはいけないものです。この間に未納期間が生じてしまう場合には、免除の手続きをする必要があります。しかし、中には免除申請ができなかった人もいるでしょう。
免除申請をしないまま未納期間が続くと、将来的に受給できる年金が減額されます。若年層の中には親御さんがその対象になっている人がいるかもしれません。援助できない事情があれば、高齢任意加入を勧めましょう。
高齢任意加入とは、60歳~65歳の間に継続して年金を納め続けることにより、過去の未納期間を埋める公的システムです。これにより、年金受給開始となる65歳の時点で受給額が再計算され、加算されることになります。
若年層でも免除申請を行っておらず、現在未納期間が続いてしまっている人は、ぜひこの制度を覚えておくべきです。そして可能な限り早く、免除申請の手続きを行っておきましょう。
厚生年金での上乗せと民間の個人年金商品の準備を
会社員(アルバイト、パート含む)のような勤め人なら、将来的に厚生年金を見込める立場になります。国民年金に上乗せされる形での支給となり、国民年金だけよりかなり多い金額になるでしょう。
ただし、これは厚生年金制度が破綻しない場合に限ります。今や厚生年金も危険視される時代、楽観してばかりはいられないと考えておくべきです。
そこで考えるのは個人年金商品でしょう。銀行や保険会社から多くの個人年金商品がリリースされています。現在の生活に適した保険料を捻出できるのなら、老後の安心のため、最低1つは契約しておきたいものです。
共働きならそれぞれの名義の個人年金商品を用意しておくとより安心できます。単純に老後の生活費に余裕が出るということや、どちらかに不幸があった時、遺産として遺すことができる面がメリットとなります。
年金だけでは追いつかない時代、資産運用でカバーする
国民年金、厚生年金、個人年金だけでは老後の資金を確保しきれない人も出てくるかもしれない時代です。不安を感じるのであれば、他の方法を模索していく必要があるでしょう。
取り得る手段としては資産運用による資金確保です。もちろんリスクの高い方法を選択する自由はありますが、今の時代は低リスクで安定した資産運用が可能になっています。
月々2万円の投資で始められる商品もあり、投資を含めた資産運用は多くの人にとって身近なものになりつつあります。
同じ2万円を銀行に預金しても構いません。ただ、金利の低さに頭痛を覚えることは予想しておきましょう。
投資で2万円を投入するなら、いずれリターンが楽しめる可能性が高くなります。とはいえ、元本割れを覚悟しておく必要もあり、性格によっては貯金のほうが安心できるかもしれません。
資産運用をするとしても、日本の投資商品、海外の投資商品では、性質もリターンも変わってきます。日本は元本割れが少ない反面リターンが低く、海外ではリターンが大きくても為替の変動によるリスクをはらんでいます。
長期的な投資をしたいという人であれば、複利効果のある長期商品を探すとリターンが大きくなります。これは海外に多い投資方法です。
複利効果とは、増えた利息を元本に組み込み、総額を新たな元本として扱う方式です。次の利息は増えた元本に対して発生するため、投資を続ければ続けるほど、残高が増えていくことになります。
かと言って海外商品は為替リスクが…円安が進んだら…と心配が尽きないのなら、国内商品と海外商品の両方を手がけるという手段もあります。
いずれも少額から投資可能な商品がある時代ですし、家計の負担にならない程度に資金を用意することができるのなら、リスク分散の意味も含めてトライしてみると良いでしょう。
できることからコツコツと、余裕があるなら少し勇気を
年金制度の先行きに不安を感じているのなら、気付いた時すぐに対策を取ることが、安定した老後に繋がる第一歩です。特に年金受給額が大幅に減ると言われ続けている30代、40代は真剣に考えるべきでしょう。
基本の国民年金の納付はもちろん、上乗せできそうな制度は全てチェックし、利用していくべきです。個人年金商品を確保できれば尚良いでしょう。不況が続く時代、家計と相談しながら対策する必要があります。
リスクを取る経済的、精神的な余裕があるのなら、少し勇気を出して資産運用に価値を見出すのも良い手段です。最近では初心者でも運用しやすい商品が増えています。信用できる商品を探してみましょう。
老後資金2000万円は誰もが貯められる額ではないかもしれませんが、極端な生活資金の不足が出ないよう、自分で対策することは可能です。年金問題に打ち勝つために、今からしっかり対策しておきたいですね。