はじめに
国家公務員の定年は原則60歳となっていますが、その年齢を65歳に引き上げる「改正国家公務員法」が参院本会議で可決成立したことは、多くの人がニュースですでにご存知かもしれません。
国家公務員定年年齢が65歳になることは、他の仕事をしている人にはあまり関係がないようにも感じますが、意外なところでメリットやデメリットが想定されています。
そこで今回は、国家公務員の定年65歳引き上げによる影響についてご解説しましょう。
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改正されるポイントについて
国家公務員の定年が、明日からすぐに65歳に引き上がるわけではなく、「国家公務員法等」の一部改正により現在の60歳を「段階的」に65歳にすること。
令和5~6年で61歳、令和7~8年度に62歳、さらに翌年も1歳というように、最終的に令和13年度から定年65歳になるという法律案です。
この引き上げ期間中に定年の年齢を迎える人は、現在60歳定年退職者の再任用制度を使い65歳で廃止。
参院本会議で可決となりましたが、日本維新の会は反対を表明。
与党や立憲民主党などの賛成により、国家公務員の定年が5年延びることになります。
役職定年制を導入する
改正案では「役職定年制」を導入することも示され、60歳に達した誕生日から最初に迎える4月1日の間に、管理監督職以外の官職に異動させようというのが役職定年制。
公務の運営に支障が考えられる場合は、管理監督職として勤務を継続できる特例も設けています。
役職定年制は、管理職がラインから離れ専門職に就く制度。大手企業では1980年以前よりすでに導入しているところもあるのです。
この制度を導入することで、組織の活性化や新陳代謝を促すメリットが期待されます。
さらには人件費の増加を抑制する場合、職員の高齢化により起こるポスト不足の解消なども狙いになるでしょう。
日本では規模が大きい企業ほど導入する傾向があり、国家公務員にも導入するのは、今後の働き方やサービスにも影響があると考えられます。
65歳に引き上げるメリットについて
改正国家公務員法の目的は、日本の労働人口の高齢化が背景にあり、若い人が減る労働環境では経験豊かな職員に現役でもっと長く勤務してもらうという理由があります。
それにより社会保障制度の維持など、さまざまなメリットが考えられるでしょう。
また国家公務員の仕事人気が低迷する近年、定年65歳に引き上げることで人気過熱するのはでないかという意見もあるようです。
公務員人気が低下する理由としては、長時間労働でプライベートが充実できない、自己成長させるには不向きな職場など、悪い印象を持つ人が多いですよね。
土台にある少子化は公務員だけでなく、労働人口が全体的に減少する大きな理由。さらに技術職が給与の高い民間企業に流れてしまうことや苦情対応など、ストレスが多い仕事であることも理由でしょう。
日本の国家公務員の数は、令和2年の段階で25万3132人、平均年齢は42.9歳。気になる給与の平均月額は、41万6203円となっています。
公務員の給与は基本級に諸手当がプラスされ、職種により公安職や医療職、教育職などの棒給に分かれ、さらに民間企業の役職に当たる級数や勤続年数を反映した金額。
時代背景によりダメージを受ける民間企業が多い中、国家公務員の仕事は人気が増え始め、さらに定年65歳に引き上げになれば安定して働ける職場になるでしょう。
このような条件が徐々に整ってくると、公務員の人気低迷は歯止めがかかる可能性がありますね。
定年延長のデメリットは?
国家公務員の定年65歳引き上げは、働き方にも影響を与える可能性があります。長く勤められるため、さらに仕事へのモチベーションが高まると、役場などの窓口の対応も柔軟になるのでは?との期待の声も。
逆に定年延長になると、組織としての高年齢化は避けられず、若手のやる気が低下するリスクが懸念されています。必然的に若い労働者が減少する日本、高齢者が職場に増えると新しい動きに対応できないリスクも増えるでしょう。
さらに社員の給料調整、健康面での不安、職場の安全管理など、あらゆる課題が出てくることも想定しなければなりません。また公務員と縁のない人でも、国家公務員の定年延長になると気になるのが年金支給開始年齢との関係です。
今までの流れを見ると、定年延長は年金と密接な関係があり、定年65歳に引き上げになれば支給開始年齢も引き上がる可能性は大。
本来もらえるはずの年金を1000万円ほど失う概算になるという話もあるように、生涯現役でいることはメリットもデメリットもありますね。
年金支給開始年齢に向け、まずは民間企業の定年延長の地ならしとして、国家公務員の定年を65歳に引き上げることも理由なのでしょう。
まとめ
国家公務員の定年が65歳になると、官僚定年も延長されるということ。
新しいアイデアを取り入れるのは難しくなるかもしれませんが、公務員人気が再び高まれば、日本の経済市場にも活気が戻る可能性は期待できそうです。
60歳をゴールにして働く人にとっては、労働期間がさらに5年延びることは複雑な気持ちかもしれません。