出典:さなぎ日記
この記事の目次
はじめに
日本の製薬大手エーザイが快挙です。
米バイオ医薬品大手バイオジェンと共同開発したアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」が、米食品医薬品局(FDA)によって承認されました。
これまでは進行を一時的に遅らせる薬しかなく、原因とされる物質に直接作用する治療薬の承認は世界初となります。
新薬使用への期待が高まる中、エーザイ株がストップ高となりました。
エーザイ株ストップ高買い気配
出典:wikipedia
エーザイ株は8日午前の取引で前日比19%高の9251円とストップ高買い気配となり、売買が成立していません。
午前9時53分時点で差し引き1026万株超の買い気配となりました。
7日の米株式市場でのバイオジェン株の終値は38%高の395.85ドルと、2015年4月以来の高値を付けています。
FDAは昨年11月の諮問委員会会合で、治験データが有効性を十分に証明できていないとして前向きな評価を与えなかったことから、エーザイの株価は低迷していました。
エーザイは8日、5月に開示した22年3月期の業績予想にアデュカヌマブに対するFDA承認の影響は織り込み済みだと発表しています。
なぜFDAは新薬を承認したのか?
FDAは承認理由について、患者の脳内に蓄積し発症に至るとみられる物質アミロイドβ(ベータ)プラークが、同薬の投与によって一貫して減ることが臨床試験(治験)で確認されたと説明しています。
FDAは、深刻な病気に苦しむ患者に新たな治療法を提供するために「迅速承認」という手続きを取りました。
患者団体が承認を歓迎する一方で、専門家からは認知機能の低下を抑えることができたとする治験結果を疑問視する声も。
このためFDAは、今後追加で行う治験で意図した効果が示せなければ、承認を取り消す可能性もあると述べています。
臨床試験はどのようなものだったのか?
アデュカヌマブの国際的な後期臨床試験には、3482人の患者が参加しました。
そこでは、同薬を月1回投与された患者に、偽薬を投与された患者よりも記憶や思考の問題の悪化を遅らせる効果はみられないとの分析結果が出ていたのです。
そのため、臨床試験は2019年3月に中止されました。
しかし同年末、バイオジェンはより多くのデータを分析し、より高用量で投与すれば薬が有効であり、認知機能の低下を大幅に抑制したと結論づけました。
新薬アデュカヌマブはどんな薬?
出典:Medscape
アデュカヌマブは、アルツハイマー病患者の脳内で異常な塊を形成して細胞を傷つけ、記憶力や思考力の低下、コミュニケーションの問題や錯乱といった認知症の症状を引き起こすたんぱく質、アミロイドβプラークを標的とします。
現在の治療薬は症状を和らげるものしかない中で、脳内のアミロイドβプラークを減少させ、アルツハイマー病の病理に作用し、早期アルツハイマー病の認知機能低下を長期的に抑制する可能性のある、アルツハイマー病治療薬は初めてです。
同薬は軽度の患者に月1回の投与を想定しています。
「ADUHELM」の製品名で販売される同薬の販売価格は、投与1回約47万円、年間約610万円となるようです。
ピーク時売上高1兆円以上の超大型化も期待されています。
エーザイの内藤晴夫最高経営責任者(CEO)のコメント
「AD(アルツハイマー病)の根本原因を突き止めるためのたゆまぬ追求を通じて、エーザイは、1980年代初頭よりAD治療薬の開発に取り組んできました。
また、四半世紀以上にわたってAD当事者様に寄り添い、ニーズを理解することに努めてまいりました。
ADUHELMの承認によって、AD治療の歴史に新たな1ページを開くことができたことを大変嬉しく思います。
本承認により、グローバルヘルス、社会、そして、最も重要な当事者様とご家族の将来に大きな展望や希望をもたらす治療オプションを提供し、認知症エコシステムの進展に大きな一歩を踏み出すことが可能となります」と述べています。
バイオジェンのミシェル・ヴォナッソス最高経営責任者(CEO)のコメント
「この歴史的瞬間は、十年以上にわたる複雑なAD領域における画期的な研究の集大成です。
このファースト・イン・クラスの薬剤が、ADと共に生きる方々の治療を変革し、今後、継続的な革新を起こすと確信しています。
私たちの臨床試験に参加いただいた何千人ものAD患者様と介護者の皆様のご貢献、ならびに当社のサイエンティストや研究者の献身に心から感謝しております。
私たちは、医療関係者やコミュニティと協力して、この新しい薬剤を患者様にお届けし、拡大するグローバルヘルスの危機に対処してまいります」と述べています。
まとめ
アルツハイマー病治療薬で約20年ぶりに承認された新薬アデュカヌマブ。
患者からの期待は膨らむものの、外部専門家の審議ではエビデンスが不十分として否定的な見解も出ています。
エーザイとバイオジェンの社運が掛かった製品でもあり、今後の動向が注目されます。