すでに4回目の接種が始まっている新型コロナウイルスのワクチン。ワクチンの接種は公費で負担しており、現在は無料でできます。しかし、財務省の諮問機関である財政制度等審議会はこれを見直すべきだとし、国の負担を減らすよう提言するとしました。
もしコロナのワクチンが有料化されるとしたら、私たちにはどのような変化が起きるのでしょうか。また、審議会はなぜワクチンの有料化を求めたのでしょうか。今回はコロナの現状やワクチンの接種率を見ながら、ワクチン有料化を目指す背景に迫ります。今後の接種計画などにぜひお役立てください。
コロナの現状
11月15日現在のコロナの感染状況を見てみましょう。
感染者数 | 2,331万人
※11月15日の感染者数は102,829人 |
死亡者数 | 47,715人
※11月15日の死亡者数は88人 |
重症者数 | 257人(11月15日のもの) |
2022年は感染力の強いオミクロン株の流行により感染者数が過去最多を更新するなど、当初のウイルスから形態を変えた変異株が猛威を振るいました。2月、8月には感染者数が爆発的に増え、何度も医療のひっ迫を招きました。
直近1ヶ月の感染者数の推移を見てみると、10月15日時点では34,980人でしたが、11月15日では102,829人となっており、再び増加傾向にあります。死亡者数はこれまでで47,000人以上を記録しています。
一方、重症者数は横ばいです。10月15日の重症者数は118人となっており、11月15日では257人となっています。11月15日時点での感染者数に対する重症者数の割合は約0.2%と1%にも満たない数字です。
また、ワクチン接種を含むコロナの予算は膨大な額に膨れ上がっており、令和2年度は77兆円を費やしました。東日本大震災の復興費用が10年間で約32兆円なので、それを大幅に超える金額を支出していることがわかります。
コロナに関する医療費は実質全て国が負担している状況のため、国の財源も少なくなってきているというのが現状のようです。(※1)
ワクチン接種率はどれくらい?
3回目までの接種率をまとめると、以下のようになりました。
全体 | うち高齢者 | うち小児接種 | |
1回目 | 81.4% | 92.6% | 22.9% |
2回目 | 80.4% | 92.4% | 21.9% |
3回目 | 66.5% | 90.8% | 4.1% |
国民の半数以上は3回の接種を終えている状況で、抗体の生成は進んでいるとみてよいでしょう。優先的に接種を推奨された高齢者層は9割以上が接種を終えているようです。
しかし、3回目は1回目・2回目と比べると接種率が大きく落ちています。重症化のリスクが少ない、2回以上打つのは気に触る、などいろいろな理由があるかと予想されますが、3回目以降の接種スピードは以前に比べて鈍化しているようです。
これにともなってか、9月から接種が開始されたオミクロン株対応ワクチンの接種率も8.5%と少ない数字が出ています。こちらも高齢者の接種がほとんどを占めている状況で、今後接種率が伸びるかどうか注視する必要があります。(※2)
ワクチン有料化の背景
国内のコロナの感染者数は依然として増減を繰り返していますが、ワクチンの接種スピードは鈍化している状態です。この状況で、なぜ審議会はワクチン接種の有料化を提言したのでしょうか。考えられる2つの理由を紹介します。
オミクロン株の流行
1つ目は、オミクロン株の流行で重症化するケースが減ったためです。
2022年8月に感染者数が急増した際は、感染者数が数十万人いたにもかかわらず、重症者数は数百人程度でした。オミクロン株は強力な感染力を持ちますが重症化するケースは少なく、感染者のほとんどが軽症で済みました。昨夏の重症者数が2,000人以上となっていることからも、重症化のリスクが少なくなってきているといえるでしょう。
ピーク時は2,000人を超える数となっていた重症者数は、オミクロン株の流行により減ってきているのです。(※1)
国の財政負担の減少
2つ目は、国の財政的負担を減らすためです。
コロナに関する予算は令和2年度だけで77兆円と言われています。東日本大震災の復興予算の10年間の総額が32億円なので、いかにコロナ予算の額が膨大かがわかります。
(※3)ワクチン接種も「特例」としていることから、費用はすべて国が負担している状況です。その金額は2億3,000万円と言われています。
このため、審議会はインフルエンザなどと同様に希望者のみに定期的な接種をする方針に変更して、国の負担を減らすべきだという結論に至りました。
国はワクチン接種を加速する方針を掲げていますが「審議会の提言は国の方針とは矛盾しない」としています。ただ「現在は希望者全員に引き続き無料で接種を進めていきたい」とも述べており、今後のワクチン接種については十分に注視する必要があるでしょう。(※4)(※5)
http://research-online.jp/all/property/14447/
http://research-online.jp/all/economy/13478/
http://research-online.jp/all/economy/14045/
まとめ
ここまで、コロナの現状やワクチンの接種率をもとに、なぜワクチン有料化の提言がされたかを解説しました。
今後はコロナがインフルエンザなどと同じ「5類相当」の取扱になるのか、新たな変異株である「BQ.1系統」「XBB系統」に対応できるか、が課題となります。(※6)重症化のリスクを増やさずに各種対策を講じながら、コロナと上手に付き合うことが求められそうですね。
もしコロナワクチンやコロナの診療が有料となった場合は、私たちは通常の診察と同様、医療費を負担する必要があります。中には、資産運用などで医療への備えを行いたいと考えている方もいるでしょう。資産運用などのお金のご相談は、リサーチオンラインにて受け付けています。ぜひお気軽にご相談ください。